日ロ首脳会談が、事前の期待値に比して意味のある成果を生まなかったのは、ロシア側に日本と妥協する意味がもはやないからです。ウクライナをめぐって欧米と対立し、経済制裁の対象となっているロシアは、本来は行き詰っています。

 経済の高度化が叫ばれて久しいにも関わらず、エネルギー一本足打法の経済構造は変わらない。オリガルヒが特権を享受する疑似資本主義社会には腐敗が蔓延しています。ソ連時代からの兵器体系を維持し、プーチン大統領という有能なリーダーを戴いているせいで存在感を高めているだけです。その存在感さえ、米国の消極姿勢の反映という方が正しいわけです。

 プーチン大統領は、自国の閉塞感をよく理解していますから、対日外交を一つの局面打開のツールにしようと思ったのでしょう。島の問題で、本当に妥協する気があったようには思えないけれど、少なくとも、妥協可能性を示唆することで日本側も動くと読んだ。安倍政権も、その構造を理解した上で敢えて乗った。ただ、結果から言えば、トランプ政権誕生を通じて、日ロ接近を支えた構造自体は吹っ飛んでいます。

日本に厳しくなりつつある構造


 初めの問いに戻りましょう。なぜ、安倍政権が1月解散を行わなかったか。安倍政権が勢いを生み出せない理由は、国際政治上の構造が日本にとって不利になりつつあるからです。オバマ政権期を通じて腰が引けていた米国は、トランプ政権を迎えて開き直って内向きになっています。経済交渉の文脈でも、安全保障上も日米同盟が盤石で、万能ということではなくなりつつあります。

 その中で、安倍政権はどんな手を打つのか。構造が大きく変わろうとしているタイミングは、大胆な発想と行動力を持っていれば、好機にもなるものです。目下のところ、安倍総理を脅かす存在が見えない以上、政権の安定が日本の国益になる。解散云々と言っている場合ではないということでしょうか。