9月に予定されているドイツの総選挙で、難民の受け入れが大きな争点なるのは必至だ。ベルリンの事件発生から1時間も経たないうちに、AfDに所属する欧州議会議員のマルクス・プレッツェル氏は、ツイッターで「犠牲者はメルケルによって殺されたようなもの」と、メルケル首相の難民受け入れに寛容な姿勢を激しく批判している。AfDの支持率がさらに上昇する可能性は非常に高い。多くの市民やメディアが冷静さを保とうとする一方で、難民受け入れに不安を感じる市民も少なくない。EU諸国の政治的な動きを分析するドルトムント工科大学ジャーナリズム研究所のユリア・ローネンドンカーさんは、「トランプ現象」がドイツ人有権者に与える影響は実際には大きいのではないかと推測する。
 
 「国が二つに分断しているという点では、ドイツもアメリカに似た部分があります。移民や難民との共生はドイツ社会にとって必要だと考えるリベラルな市民が多い一方で、将来に不安を抱え、国から見放されたと考えている市民が増えているのも事実です。現政権の政策に反対する市民には、難民よりもまず自国民のケアをしてほしいという感情があります。これまでは大きな声で主張するのがはばかられるような空気が社会にありましたが、アメリカでトランプが勝利したように、来年の選挙までに右派政党がさらに大化けする可能性は否めません」
 
 アイルランドのロックバンドU2は、1991年にリリースしたアルバム「アクトン・ベイビー」に収録された「ズー・ステーション」という曲の中で、ベルリンの中央に作られた動物園前駅の雰囲気や周辺の様子を東西ドイツ統合の象徴として取り上げた。2年後にリリースしたアルバム「ズーロッパ」では、欧州旗のようないくつもの星並んで作られたサークルの中に宇宙飛行士らしき人物のイラストが描かれ、東欧における革命やユーゴ紛争といった暗い話に対するU2の答として「各国が繋がることで理想郷としてのヨーロッパが始まる」というメッセージをファンに届けた。皮肉にも、昨年12月のトラックテロは動物園駅前近くで発生し、ユーロという強大な共同体に取り残されてしまったと疎外感を覚える市民が各国で増え続けている。このタイミングで台頭してきたポピュリスト政治家たち。U2が25年前に夢見た理想郷としてのヨーロッパはもはや夢物語なのだろうか。