意図的に誤った説明をして申請をさせずに追い返すというケースもある。ある50歳の男性の相談者は、「生活保護は高齢者や障害者が受けるものだ」と誤った説明を受けていた。高齢者や障害者の人だけが「生活保護を受けられる人」ということにされていたのだ。あるいは「病気をしないと生活保護は受けられない」、「65歳以上になってからでないと生活保護は受けられない。65歳になってから来てくれ」と言われた人もいる。

相談者を怒鳴りつける


 軽度の知的障害がある20代の男性に対して、行政が水際作戦を行なったケースもある。彼は一人で福祉事務所の窓口に行って、生活に困っていて、アパートの家賃を三ヶ月滞納しているし、ガス・水道も止まっている、仕事も見つからない、これまで派遣で働いていたけれどそれも切られてしまったという状況を説明した。しかし窓口のケースワーカーは、「あなたは若いでしょう。仕事を探してみてくださいよ」と言うだけだった。

 相談者は「がんばって探してもみつからない」と訴えたが、「みつからないのは仕事を探す方法が悪い」とか「探す努力をしていないからだ」と。彼はその後、再び仕事を探すが障害を持っていたこともあり、短期間探したくらいでは、続けられそうな仕事を見つけられなかった。後日「やっぱり見つかりませんでした」とケースワーカーに報告すると、ケースワーカーは怒って「なぜ、それだけのことができないんだ」と叱責した。その後、私が同行したことで申請をすることができ、生活保護の受給が決定した。

 こうしたことは生活保護の窓口では昔から繰り返されている。これらの対応は生活保護法という法律に明らかに違反している「犯罪」であると、私は考えている。

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 私たちの事務所に相談に来る人の9割は、すぐに生活保護が必要な状態である。福祉事務所の窓口に来る人たちの多くも、そのような状態である人がほとんだと思われる。しかし相談を受ける行政のケースワーカーは、その人の切迫した状況について関心を持っていない。住民の生存権を守るために最前線に立つケースワーカーの多くが、他人事だという姿勢で臨んでいるのではないかと思われる。

 福祉事務所のケースワーカーは、多くが大卒のエリートであり、貧困家庭の出身者はほとんどいない。貧困状態に至るのは「本人の努力不足」だと考えている職員も多いだろう。そもそもどうして貧困状態に陥るのか、社会的な視点を持って構造的に把握していない人が福祉事務所の第一線に立っている。

 彼らの意識は、言葉の端々に現れてくる。「努力すればなんとかなるでしょう」、「これまで貯金してこなかったあなたにも責任があるんですよ」。

 しかし、多くの人の状況を見ていくと、自分の生活のために努力ができる環境が奪われている。努力すればなんとかなるという非現実的な言葉は、貧困に対する認識があまりに甘いために出てくるのである。努力するための土台が崩れていることへの想像力、共感力のないケースワーカーが現場には多く見られる。