さて、ジャンパー問題が発覚してすぐに開催された市の記者会見で、私には非常に気になっていたことがあった。それは生活保護の仕事を「誰もやりたがらない仕事」「人気のない仕事」と言っていたことである。確かに生活保護の仕事は慢性的に人手不足。一人の職員につき、80件が「標準」の受け持ちとされているものの、高齢化に伴い、受給者が増えるにしたがって一人当たり120件を受け持っているなんてこともザラにある。

 こうなると、仕事はパンク状態だろう。生活保護の窓口で、生活に困窮した人が「若いから働ける」などと追い返される「水際作戦」が問題となって久しいが、その背景には「一人でも受け持ちを減らしたい」というような職員のオーバーワークがあるのだ。今回のような事件が起きないためにも、国はちゃんと予算をつけて人員を増やすべきなのである。

「生活保護悪撲滅チーム」を示す「SHAT」のマークが袖に付いた夏用のポロシャツ
「生活保護悪撲滅チーム」を示す「SHAT」のマークが袖に付いた夏用のポロシャツ
 と、このような背景もわかるのだが、テレビで流される会見で「誰もやりたがらない仕事」などと言ってはいけないと私は思う。プロ意識と誇りを持ち、生活保護の現場で働く人々に失礼だし、何より小田原市の生活保護受給者のみならず、全国の生活保護を受ける人々がその言葉を聞いてどう思うか、想像がつかなかったのだろうか。

 その他にも、疑問点は多々ある。小田原市のホームページの「生活保護制度」についてという記述。これが「オンライン上の水際作戦」(「もやい」の稲葉剛氏の発言)のようになっている。それだけでなく、事件を受けて匿名で取材に答えている生活保護担当職員が、生活保護制度の基本的なことを理解していないような発言をしているということもある。

 例えば、その職員は不正受給について「実際にはその10倍以上」と、根拠を上げないままに断言した。「中には、どう見ても健康な30代の若い男が受給を認められたりしているのです」と語っている。

 が、「若くて健康な男性が生活保護を受ける」ことは、当然だが不正受給でもなんでもない。年越し派遣村を思い出してほしい。その中には若くて健康な人もたくさんいたが、派遣切りなどで職も住む場所も所持金も失い、多くが年明けに生活保護を申請した。

 そのまま放置すれば餓死する可能性が高い。「働け」と言っても、住所がないと仕事など見つからない。面接に行く交通費も、その日の食費もないのだ。よってまずは住所を確保し、職探しをする生活基盤を整える。そのために生活保護を使うのである。これが「若くて健康な人が利用する」場合だ。また、一見健康に見えても、精神障害や知的障害を抱える人が多いことも知られている。