市民の要求が現場を苦しめる悪循環


 自治体現場に合わせて追い打ちをかけたのが、「職員定数削減」など住民や社会からの行政改革要求だ。

 肥大化した自治体業務や適性人員の観点から見直しを図るべく、業務改善や行政改革はどんどん進めればいいと思う。

 しかし、こうした行政改革のしわ寄せは、良い悪いは別にして、福祉現場にきている状況があるように感じる。

 住民としても「良かれ」と思っての行政バッシングだろうが、こうした批判がもとで行政の仕事をオーバーワークにつなげている部分があることも考えなければならない。

画像はイメージです
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 生活保護部署においては、もう一つ大きな重荷になっているのが、「不正受給」の問題だ。

 生活保護については、様々な噂が絶えない。

 生活保護者の場合、家賃の取りっぱぐれがないため、むしろリフォーム費用をかけるよりもそのままの物件を生活保護者に貸そうという不動産会社が、市役所の目の前に店舗を構えて、「生活保護者歓迎」と看板を出す。

 同様に、医療費についても、病院においては医療費の未払いは経営にとって大きな課題になる。ところが生活保護者の場合、医療費が無料になる代わりに行政が税金から支払うことになるので、医療機関からすればむしろ医療費の取りっぱぐれがない。

 そのため、生活保護者が頻繁に病院に通うようになる、薬を多めに出す、さらには生活保護者がその薬を転売する等という状況になって、病院側も生活保護者もwin-winになっている。などという噂がまことしやかに囁かれている。

 生活保護者がベンツやBMWに乗っている、子どもは私立学校に通い、家族で海外旅行にも行ってる・・・等々、私が耳にしただけでも怪しげな噂は絶えない。

 当然、こうした噂を聞いた市民は「不正受給を突き止めろ」と指摘する。

 しかし、実際には職員の調査権限はほぼ皆無であり、担当職員は、真面目であればあるほど、市民の要求と実際にできることの狭間で苦しみ、また現場では、生活保護が支給されるされないは、まさに生きるか死ぬかの分かれ道でもあり、本当に壮絶な現場を日々体験することになる。

 生活保護担当といえば一昔前の役所では、ある意味3K部署であり、人気がなく、役所によっては窓際部署のように扱っている所もあった。

 しかし、現在では、2倍3倍のペースで仕事が増えながら、人員はほとんど変わらないという状況にある。ある種の専門性を持たなければ仕事にならないケースワーカーたちが、日中、受給者の自宅を回り、17時に戻って、それからデスクワークをこなし、家庭によってはさらに夜間に訪問して対応するという、公務員の勤務規定からは考えられないような実態で回しているところがあったりもする。

 役所の中では、花形部署と言われる財政や企画、人事や総務といった部署を渡り歩いた人たちが出世していく傾向にある。

 各自治体は、今一度、福祉現場の実態をしっかりと認識し、「部署ごとの問題解決」という段階から1段フェーズを上げ、全庁的に解決しなければならない課題だと認識して、すみやかに対応していく必要があるのではないか。

 道路や開発についての国会への陳情もいいが、むしろこうした自治体現場の抱える「闇」とも言える問題解決を、地方から国に要求していく必要があるのではないだろうか。

たかはし・りょうへい 中央大学特任准教授、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザーなども務める。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員等を経て現職。世代間格差問題の是正と持続可能な社会システムへの転換を求め「ワカモノ・マニフェスト」を発表、田原総一朗氏を会長に政策監視NPOであるNPO法人「万年野党」を創設、事務局長を担い「国会議員三ツ星評価」などを発行。AERA「日本を立て直す100人」、米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムなどに選ばれる。テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BSフジ「プライムニュース」等、メディアにも出演。著書に『世代間格差ってなんだ』、『20歳からの社会科』、『18歳が政治を変える!』他。株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員も務める。