ケースワーカーの苦労

 1月下旬、小田原市の生活保護窓口を訪ねた記者の目に飛び込んだのは、ひっきりなしにやって来る相談者の姿だった。2つの窓口には人が絶えず、職員は昼休みの時間でも構わず対応を続けていた。

 そもそも生活保護とは憲法25条の理念に基づき、国や自治体が「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しつつ、自立を促す制度のことだ。年齢や健康状態、困窮の程度などで毎月の保護費が決まる。

 希望者は地域の自治体が設置した福祉事務所に申請する。その際、面接対応や受給後の家庭訪問など、行政で生活保護全般を担当する職員を一般に「ケースワーカー(CW)」と呼ぶ。

 小田原市にはCWが26人いて、面接の専門員2人をのぞく24人が約2320世帯を受け持つ。社会福祉法は、CW1人当たり80世帯の受け持ちを標準とするが、小田原市ではCW1人で約100世帯を担当する。その業務は過酷そのものだ。

「申請者の資産や扶養者を調査したり、受給者を訪問して自立に向けた支援をするのがCWの大きな仕事です。事務作業が膨大で時間的余裕がなく、家庭訪問は週1度、10~20件まとめて行います。預貯金や年金の調査から自己破産の手続きまで行い、面接では7時間ぶっ続けで話を聞くこともある。朝から晩まで働きづめでキリがなく、この業務を始めてから“仕事が終わった”と思って帰宅した日は1日もありません」(Aさん)

 肉体だけでなく、精神的な疲弊も大きい。小田原市の男性CW、Bさんが言う。

「窓口で怒鳴られることはしょっちゅうです。精神的な障害を抱えているかたが自らをコントロールできず、感情をあらわにするケースも多い。制度に納得がいかず、『もっとお金が出るはずだ!』と責められることもあります。直接的な暴力こそありませんが、身の危険を感じることは多いです」

 小田原市の男性職員Cさんは、訪問先で遭遇した出来事が忘れられない。

「受給者と連絡が取れなくなったのでCWの家庭訪問に同行したら、布団の中で仰向けに倒れて亡くなっていました。テレビがつけっ放しだったので、心筋梗塞などで突然死したのだと思います。傷病が理由で保護を受ける高齢者はとても多く、現場のCWは平均で年1度はこうした場面に出くわしているはずです」

 小田原市で生活保護にかかわる管理職の1人は業務の実態をこう打ち明けた。

「生活保護の現場は常に危険と隣り合わせで、“大変な職場だ”とすべての職員が思っています。小田原市は5年が人事異動の目安ですが、希望を募ると生活支援課の全員が『異動したい』と言います。異動してきた直後は『頑張ります』と殊勝に語っていた職員も、何年かすると例外なく異動を希望する。心を病んで休職する者もいます」