大阪市の2014年度の不正調査件数は1593件で、うち保護停止・廃止および申請却下が330件、不正受給と認定して返還を求めたのが157件だった。着実に成果は出ているが、なかには事実確認が難しい案件もある。

 「離婚率が全国でも上位の大阪では、夫婦が意図的に世帯を別にして、奥さんだけ生活保護を請求するケースが多い。別れたはずの夫が家にいる場合、家庭訪問で見つけても『たまたま子供の顔が見たくて来たんや』と言われると対処が難しい。その場合は本人や夫の事情聴取に加え、近所や地区の民生委員に確認します」(前出・大阪市の担当者)

 連日、途方もないイタチごっこが続いているのだ。

働けるのに働かない人たち


 不正受給以上に根が深い問題は、「働けるのに働かない人」たちの存在だ。厚労省は生活保護の被保護世帯を「高齢者」「母子」「障害・傷病者」「その他」に4分類するが、近年、「その他」の世帯が急増している。

 『生活“過”保護クライシス それでも働かない人々』の著者で現役CWの松下美希さんは、「近年、制度を利用して楽に収入を得ようという人が増えている」と指摘する。
「『その他』は稼働年齢(15~64才)で障害や病気がなく、母子家庭でもない世帯のことで、2003年は全体の9%だったのに2013年に20%近くまで伸びました。不況やリストラで失業者が増加し、働きたくても働けない人が増えたことが背景にあります」(松下さん)

 一大転機は2008年のリーマン・ショックだった。この年の末、仕事や住居を失った人のためNPOなどが開設した『年越し派遣村』が社会問題となり、国の方針で生活保護のハードルが一気に下がった。

 「それまで申請しても却下された稼働年齢の人々が一気に生活保護になだれ込みました。その結果、労働せずにお金をもらえることに慣れてしまい、働けるのに働かない人が増えました。お金は労働の対価なのに、“困ったら働かずに生活保護”と安易に考える人が増えたのです」(松下さん)

 実際、健康に問題のない男性が失業して保護費を受給すると働く意欲を失い、その後はいくら就労支援をしても「肉体労働はイヤだ」「給料は最低でも30万円」とダダをこねるケースを松下さんは何度も経験している。こうした人々を利用する「貧困ビジネス」もあとを絶たない。

 「働く意欲のないホームレスやネットカフェ居住者をかき集めて生活保護を申請させ、劣悪なアパートなどに住まわせて、保護費から家賃や生活費をふんだくるビジネスです。暴力団など反社会的勢力が関与するケースもあります」(前出・大阪市の担当者)

 大阪府は2011年に生活保護受給者を集めてサービスを行う場合は自治体に届け出るよう条例で定めた。これで警察が関与しやすくなったが、生活保護の裏側に闇が広がることを忘れてはならない。