島田裕巳(宗教学者)
女優の清水富美加さんが、芸能界を引退し、幸福の科学に出家するということで大きな騒ぎになっている。

幸福の科学は、宗教のなかでは一般に「新宗教」に分類されている。新宗教をいったいいかなる宗教集団としてとらえるかについては、学界でも議論があり、一時幸福の科学は新宗教よりもさらに新しい「新新宗教」に分類されていたこともあった。
新新宗教とは、戦後の高度経済成長が終わり、オイルショックを景気に低成長、安定成長の時代に入ったことを象徴する宗教のことである。
従来の新宗教が病気治しや「現世利益」の実現を約束するのに対して、終末論やそうした事態を乗り越えるための超能力の獲得を宗教活動の中心に据えるものが新新宗教であるととらえられてきた。
そうした新新宗教のなかで、1980年代後半からのバブルの時代に台頭したのが、幸福の科学であり、当時はそのライバルと言われることも多かったオウム真理教である。
幸福の科学が社会的に注目されたのは、1991(平成3)年のことである。その年の7月7日には、教団の総裁である大川隆法氏の誕生日を祝う「ご誕生祭」が東京ドームで開かれ、事前にテレビで相当に派手な宣伝が行われた。私も、実際にこの祭典を取材に出かけたが、急成長する教団の存在を社会に向かって強くアピールしようとするような内容になっていた。
ただ、その一方で、講談社の出版物が教団とその信者の名誉を甚だしく毀損する記事を掲載したとして、当時信者であった作家の景山民夫氏や女優の小川知子氏などが被害者の会を結成し、講談社に対して強硬な抗議活動を行ったことでも、この教団は注目されることとなった。
講談社に対しては、膨大な抗議のファックスが送られ、また、教団や信者が講談社などに対して億単位の訴訟が行われた。ちょうとこの時期は、オウム真理教が進出した地域で住民とトラブルになっており、両者あいまって、社会的な注目を集めざるを得なかった。