民主化運動が東アジアの安定と秩序を狂わせた


 韓国で「この程度の人物」しか大統領候補に挙がらないというのは、国民世論と無関係ではない。韓国はもはや左翼勢力の浸透を防ぐのではなく、彼らに支配された国家機関をどのように奪還するかという段階にある。

 朝鮮戦争の際、北朝鮮の攻撃によって韓国は百数十万人もの犠牲者を出しながら、従北派になる心理はわれわれには理解しづらい部分があるが、心理学でいうところの「ストックホルム症候群」が正鵠を得ているのかもしれない。誘拐された人間は長時間、非日常的体験を共有することで犯人へ信頼や愛情を抱くようになるという。長期にわたる休戦状態と北朝鮮と韓国が同じ朝鮮同胞であることや北朝鮮による韓国国内での工作活動、全教組(全国教職員労働組合)による左翼教育が加わり、従北派は勢力を拡大していった(韓国における北朝鮮のスパイ活動史は拙著『韓国「反日謀略」の罠』〈扶桑社〉にて詳述)。

 韓国の左傾化には民主化運動が深く関わっている。韓国で民主化を叫ぶ勢力の主力は自由主義者たちではなく、従北派であった。「軍事政権=悪」という戦後日本の短絡的な思い込みで韓国の民主化を讃えるのは誤りであり、これが東アジアの安定と秩序を狂わせた転換点であった、と後世の歴史家たちはその史書に書き加えるであろう。

 金大中・盧武鉉大統領が政権を執った約十年のあいだ、国会議員をはじめ、行政・司法・立法などの主要な地位は従北派が占めるようになった。韓国軍までもこれまでの「大韓民国在郷軍人会」に対抗した「平和在郷軍人会」という組織をつくり、従北を支援する動きを取りはじめている。

 従北派の狙いは「韓国の内部崩壊」「日韓・米韓関係の悪化(反日・反米)」であり、「中国への従属(親中)」である。

 そして彼らは日本の左翼勢力とも密接な紐帯を有している。たとえば沖縄の「高江ヘリパッド問題」では、アメリカ海兵隊の基地である北部訓練場返還をめぐって抗議活動が展開されたが、運動に多くの韓国人が交ざっていたことがインターネットで報じられている。その根底にあるのは、在韓米軍撤退を主導する韓国の従北派が日本の左翼と共闘しているためである。

 もともと、前述した全教組は親北朝鮮であった日教組が韓国で創設を指導し、韓国の労働組合(韓国労働組合総連盟〈韓国労総〉、全国民主労働組合総連盟〈民労総〉)創設も日本の労働組合が支援するかたちで広まったが、いまや従北派の勢力は巨大化し、日本の左翼運動を逆に指導するかたちへと変貌した。この一連の背景を知らなければ、なぜ彼らが日本の政治運動に参加しようとしているかの真相に近づくことはできない。