円安ドル高傾向は、日本企業にとって輸出に貢献するだけではなく、また企業のバランスシートを改善する効果があることが知られている。日本の大企業の多くが資産をドル建て、負債を円建てで所有しているとしよう。円安ドル高によって企業は資産価値を高め、負債を圧縮する。企業のバランスシートの改善は、やがて投資や名目報酬の引き上げなどで働く人たちに恩恵をもたらすだろう。

 この傾向は、2012年終わりから2013年にかけての安倍政権発足後に観測された「事実」だ。この「事実」が株価の改善にもつながる。もっとも、日本特有の要因(東芝問題など)が若干足を引っ張っていることはある。だが、それでも11月のトランプ氏の大統領選勝利後から大幅に株価は戻し、日経平均株価は2万円台目前まで迫っている。

 これらの「予想」面での改善は、別な観点からも裏付けることができる。いわゆる「イワタ式景気予測法」である。これは現在、日本銀行副総裁の岩田規久男氏がしばしば重視してきた経済の動きを見分ける手法で、有力エコノミストもこの予測法を参考にしている。


3月16日、日銀本店へ入る岩田規久男副総裁(代表撮影)
 内閣府がホームページ上で公表しているコンポジット・インデックス(CI)という景気動向指数がある。このCIには景気の動きに先行すると考えられる先行系列、景気の動きと一致する一致系列、さらに景気の動きに遅れて反応する遅行系列がある。CIは景気の強弱を定量的に計測しようというもので、いわば景気の勢い(景気拡張や景気後退の度合い)を伝えるものだ。例えば、世界経済に懸念材料があれば、どのくらい日本経済を悪化させるのか、その度合いを予測するのに使える。特に、「イワタ流景気予測法」は、このCIの先行系列の6カ月前・対比年率を景気予測で重視している。

 最近の日本ではどうなっているだろうか。ネットでは「質問者2さん」として著名なブロガーが最新のデータを紹介している。最新のイワタ式景気予測だと、2013年のアベノミクスの初年度に近い水準にまで経済が回復している。また相変わらず雇用面では、過去最高の数値を達成した大卒の就職率や、今年度の新卒採用の動向をみても相変わらず好調である。日本経済は、消費増税によってもたらされたこの3年近くの「雇用の回復がある」景気低迷からようやく脱却しそうである。

 もちろんこれは黙って達成されるものではない。2012年後半から現在に至る安倍政権の経済政策、アベノミクスによるものだ。雇用回復の余地はまだ大きく、さらにデフレの完全脱却、賃金・所得の上昇を実現しなくてはいけない。だが、それはいまの政策を最低でも維持、そして強化していけば達成が可能だろう。もちろん海外のリスクは冒頭に述べたように安全保障面で深刻なのだが、それでも国内経済の改善ペースをあげていく障害にはならない。できることをするまでだ。