「拉致解決で訪朝」の仰天プラン! 誰も知らない昭恵夫人ホントの裏話

『有田芳生』

読了まで5分

有田芳生(参議院議員)

 安倍晋三氏と昭恵さんが結婚した直後のことだ。森永製菓の社長で父の松崎昭雄さんは、ある会合で知人の経営者に「あの娘は天衣無縫なところがあって」と不安を語っていたそうだ。私がそのエピソードをその経営者からたまたま聞いたのは、この原稿依頼があった日のことである。「天衣無縫」は精神の自由の発露であって、必ずしもマイナスではない。しかし政治的文脈に置かれると今回のような難題として一挙に襲いかかってくることがある。ご本人に計算された政治的配慮などないからこそやってきた危機的事態である。

米大統領との首脳会談のため米国に向け政府専用機で出発する安倍晋三首相(左)と昭恵夫人=2月9日午後、羽田空港(古厩正樹撮影)
 私が昭恵さんの人柄を聞いたのは、音楽評論家の湯川れい子さんからだった。たしか第一次安倍政権のころだった。女性たちの会合に昭恵さんもかかわっていて「とてもいい人よ」という言葉を聞いた覚えがある。直接にお目にかかったのは国会の議院会館の会議室だ。東日本大震災関連の会合で、私は上梓したばかりの『ヘイトスピーチとたたかう!』(岩波書店)をお渡しした。まだヘイトスピーチ解消法が成立するきざしもないころのことで、昭恵さんがヘイトスピーチの攻撃対象である韓国の文化に関心を持っていることを知っていたので、きっと理解していただけるだろうと思っていた。 

 安倍昭恵さんについて私が語れることといえば、知人の記者がご本人から聞いたという「家庭内事情」ぐらいのことだ。首相が午後9時ぐらいに帰宅しても、昭恵さんは午後11時ぐらいに帰ってくることがしばしばあったという。「家庭ではほとんど会話がない」「主人の食事は母(注、首相の母の洋子さん)が作っている」といったことも、ご本人が語ったというのだが、真偽は不明である。ただしもう一つ、報道されていない事実がある。それは、昭恵さんの人物像を知る上で興味深いテーマである。週刊誌のタイトル風に書けば「拉致問題解決に総理夫人を派遣か」といったところだろう。 

 昨秋のことだ。長年にわたって拉致問題に取り組んでいるある人物からこんな相談を受けた。「拉致問題が動かないのでどうしたらいいのか。夫人外交がいいのではないかと思うのです。首相の昭恵夫人が北朝鮮に乗り込んで、ダメなら第三国で交渉するのです。横田早紀江さんにも同行してもらいます」。

北朝鮮による拉致被害者家族会の飯塚繁雄代表(中央)や横田早紀江さん(左)と面会した安倍晋三首相。拉致問題解決への決意を改めて示した=2017年2月22日、首相官邸
 昭恵さんにはすでに合意を得ていたという。その提案を聞いたとき、「そんな簡単なことではない」とは思ったが、口にはしなかった。局面を打開するには水面下での交渉が必要であり、たとえ首相夫人が訪朝しても、ただの話題にはなってもそれだけのことだからだ。

 小泉純一郎元首相が2002年に訪朝したときも、1年ほどかけて水面下の交渉があり、そこである程度の合意ができていた。外交交渉は「こちら」の獲得目標もあれば「あちら」の意図もある。拉致問題でいえば、日本の目的は生存者の一刻も早い帰国であり、北朝鮮は国交回復の実現と経済協力である。ストックホルム合意からの日朝交渉で日本側に欠けていたのは、この課題を避けてきたことだと私は判断している。官邸にその意志がないからだ。

 この夫人外交について、日朝交渉にかつて取り組んできた自民党長老に相談をしてみた。「それはいいアイデアです。しかし日本側が本気だということを示す人物、たとえば今なら二階幹事長のような立場の政治家が同行し、金銭を提示しなければ動かないですよ」と言われた。要するに、首相の覚悟があるかどうかが問題だった。この計画はある筋を通して首相や官房長官にも伝わった。その結果は却下。官房長官の表現では「つぶした」。昭恵夫人の天衣無縫は話題にはなっても、実りあるものにはならず、むしろ批判を招くという判断だったのだろう。

 首相夫人外交を提案した人物への回答はこうである。北朝鮮への渡航自粛があること、さらに国際的に制裁があるので第三国での交渉も認められないこと、他に提案があれば教えて欲しいというものだった。こうして北朝鮮に対する「首相夫人外交計画」は一切、表面化することなく消えてしまった。昭恵さんはこうしたプランに易々と乗ってしまうところがある。

 沖縄県でヘリパッド建設をめぐって問題になっている高江に姿を現すことなど、よくいえば「腰が軽い」が、悪くいえば「軽率」と見られかねない。森友学園問題でも籠池夫人と問題発覚後も頻繁にメールのやりとりをしていたことが象徴的である。おそらく人を疑うことの少ない人間なのだろう。その美質が総理夫人という立場にあっては暗転することがある。「ある時の真、他の時の誤り」(モンテスキュー)である。

この記事の関連テーマ

タグ

安倍昭恵さんはどこがマズかったのか

このテーマを見る