監督はリーダーではなく「マネージャー」


「本当にこの選手のためになることはなんだろうか」を常に考え、時には厳しい決断を下す栗山監督。ただしそれには、リスクが伴うこともあるはずだ。たとえばいくら監督が、その選手のことを思って2軍行きを命じたとしても、選手のほうはそれですっかり自信を喪失し、潰れてしまうかもしれない。

2016年9月28日、4年ぶりのリーグ優勝を決め、抱き合う
日本ハム・栗山監督(右)と大谷翔平=西武プリンスドーム(撮影・中井誠)
「そうですね。だからこそ一人ひとりの選手の性格や、心身の状態を把握しておくことが大切になります。僕は選手に技術的な指導はほとんどしません。選手のちょっとしたしぐさや表情、練習中の態度などをひたすら見ています。

 そして選手の性格や精神状態を踏まえたうえで、どんな態度で接するか、言葉がけをするかを考えます。人によって、褒めたほうがいい、叱ったほうがいいなど違いがあるうえ、同じ人でも立場や状況によっても変わってきます。一概に、どうすることが正解というのがないので、よく見ることが大切なのです。

 僕は『教える』という感覚はあまりなく、選手が持つ良さを引き出し、適材適所で輝くようにマネジメントをしているだけです。引っ張っていくリーダーというよりは、マネージャーのような役割が近いかもしれません。

 もう一つ心がけているのは、『自分の考えが正しい』とは絶対に思わないことです。『これがその選手のためになる』と思ったとしても、もしかしたらその考えは監督の独り善がりかもしれません。そうして他人の意見にも素直に耳を傾け、そのうえで『これで本当にいいのだろうか』と、自分自身に深く問いかけてから結論を出すようにしています。

優勝したからこそあえてチームを「崩す」


 日本ハムは選手の入れ替わりが激しいチームだ。栗山監督が就任してから5年の間にも、顔ぶれは大きく変わった。主力が抜けると低迷するチームが多い中で、常に好成績を収め続けている理由はなんだろうか。

「チームとして結果を残し続けるためには、常に選手を入れ替えながら、若手選手を育てていくことが求められます。とくに優勝した翌年はそれを意識します。安定した組織は良いけれど、その状態に慣れてしまうと成長がありません。キープしようと思っても面白みがないですし、勝ったときこそ次のプラスアルファを生み出さないといけない。

『チームを崩す』ことによって、これまでは出場機会に恵まれなかった選手たちは『今度はチャンスがあるかもしれない』と頑張ることができますし、出場していた選手たちには緊張感が生まれ、『次も絶対ではない』と努力し続けるようになり、結果的に個々の能力が高まる。個人もチームも進化し続けないと意味がないですからね。

 でも、それができるのは、やはり選手をはじめ、フロントやコーチ陣などとの信頼感があるからだと思います。プロ野球において、打率とか打点とか防御率とか……もちろん個人の数字は大切です。でも、それを一番にしていたら強いチームは作れない。勝てるチームを作るために何をしたらいいのか考え、皆が同じ方向を向いて動くことが、継続的に強いチームを作るのだと思います」