番組スタッフが「他のメディアにも同じように答えていたのか」と質問すると、署長は「そう細かくは回答していない」「(質問は)妨害があったかどうかストレートに聞いて、あるかないかだけ答えてます」と言った。さらに「それ以上の質問はなかったということか」と確認すると「ほとんど質問はないですね」という返事が返ってきた。

 つまり、批判記事を書いた記者たちは消防が「妨害はなかった」と答えるとすっかり満足して、それ以上の質問はしなかったのだ。署長からしてみれば、反対派と賛成派が入り交じる現地で、片方に肩入れするような発言は避けたかっただろう。だからこそ、取材には細心の注意が必要だった。

 これは最初にストーリーありき、で取材する記者が陥りがちな問題である。

 批判する記者たちは「妨害があったのか、なかったのか」だけに関心を集中させて、できれば「なかった」という話を引き出したい。事実の究明よりも、最初に自分の思惑がある。だから「なかった」の一言が得られたら、それ以上は突っ込んで聞かなかったのだ。

 2万円の日当問題についても、検証番組は「日当をもらった人がいる」という複数の住民の声を紹介した。「もらった」と言われた本人は取材を拒否したが、もらった人をかつて取材したジャーナリストの大高未貴氏のスタジオ証言も合わせて考えれば、反対派の一部にであれ、日当が支払われていたとみる蓋然(がいぜん)性は十分にある。
 それでも現場の記者たちは取材しているだけ、まだましだ。お粗末なのは論説委員たちである。たとえば朝日新聞は社説で「事実に基づかず、特定の人々への差別と偏見を生むような番組をテレビで垂れ流す」と書いた(1月28日付)。

 毎日新聞はどうかといえば、与良正男・専門編集委員(元・論説副委員長)が「問題の本質は…『ニュース女子』は、明らかに虚偽の内容が含まれ、特定の人々への偏見を助長した点にある」と自身のコラムに書いている(2月15日付)。

 東京新聞は番組とは関係がないのに、深田実・論説主幹が私の出演を「重く受け止め、対処します」という奇妙な反省文を載せた(2月2日付)。その中で、やはり同じように「事実に基づかない論評が含まれて」いると書いた。

 以上の3紙に共通するのは、いずれも「事実に基づかない」と指摘しておきながら、肝心のどの部分が基づかないのか、明示していない点である。論説委員たちは事実をきちんと取材したのだろうか。私は大いに疑問を持っている。