私は、いまさらPL学園の復活を期待し、あの寮生活が「今こそ必要だ」などと論じる気など毛頭ない。

 むしろ、PL学園は「没落」した形になったが、かつての王者が倒れた後にその座を奪ったチームは果たして、新しい高校野球を体現しているのか、それとも「勝てば官軍」とばかり、勝利至上主義を後ろ盾にしたチームなのか。そこを厳しく見つめる社会の眼差しが今必要ではないかと思っている。

 くしくも大阪対決となった春のセンバツ決勝。大阪桐蔭は全国から有望な選手が集まり、高校生レベルとは思えない投手、打者がチーム内でしのぎを削り、今回も全国優勝を勝ち取った。OBの日本ハム、中田翔は広島出身。今年のセンバツで活躍した2年生、根尾昴選手は岐阜県出身だ。大阪桐蔭は「寮生活で、チームの一体感を育てることも重視している」とうたっている。

 一方の履正社は、かつてはバリバリの高校野球を実践していたが、今はかなり新しいスタイルを導入しているという。寮はなく、部員全員が自宅からの通学である。しかも、他府県から選手を集めていない。文武両道を重視し、野球部員も他の生徒同様に勉強に力を入れている。

第98回全国高校野球選手権大阪大会。東大阪大柏原-PL学園。今夏限りでの休部が決まっているPL学園は初戦で敗れ、ナインは号泣しながらベンチ前に整列した=2016年7月15日、大阪府東大阪市の花園中央公園野球場
第98回全国高校野球選手権大阪大会。東大阪大柏原-PL学園。今夏限りでの休部が決まっているPL学園は初戦で敗れ、ナインは号泣しながらベンチ前に整列した=2016年7月15日、大阪府東大阪市の花園中央公園野球場
 実際の学校生活を見たことがないので、断定はできないが、PL学園の反省を生かそうとしているチームと、PL学園の成功例に学び実践しているチーム。それぞれに特徴がある。

 私は、PL学園が高野連から脱退し、名実ともに高校野球界から消え去った今、高校野球の「悪しき封建体質」も勝利至上主義も同時に終焉させ、本当に新しい高校野球への変革を目指す時ではないかと熱望している。

 サッカーのJリーグは、放映権を2100億円で買われ、劇的に体制が変わった。高校野球は「教育の一環」という名目で、放映権料はタダ、外野席もタダ、という不思議な伝統を維持している。高校野球がメディアを中心とした「ビジネス」になっていることは誰だって知っている。それなのに一方で教育を振りかざし、それでいてパワハラを放置している。この矛盾は解消すべきである。

 私は、中学硬式野球の監督を務めている立場から、野球少年の減少を切実に感じている。家の近くにキャッチボールをする場所も、草野球に興じる場所もなければ、野球自体に触れる機会がない。野球を志す少年が減るのは当然だ。「草野球のできる公園づくり」は、いま野球界が一致団結して取り組むべき、緊急プロジェクトではないかと思っている。

 前述したようにJリーグには2100億円もの値がついた。では高校野球にはいくらの値がつくだろう。この財源を元に、全国各地で草野球のできる公園を整備してはどうか。高校野球にはそれだけの「バリュー」がある。「PL学園、高野連脱退」という、ある意味ショッキングな出来事をきっかけに、そういった観点からも議論を起こし、高校野球を新しく発展させる動きが始まることを切に願う。