ところでフェイクは報道の場でも深刻である。前々回の連載でも書いたが、森友学園問題は、安倍首相や首相夫人の違法性や道義的責任にまったく結びついていない。一時期よりも少なくなったが、いまだにメディアの報道では両者を結びつける根拠のない「疑惑」のオンパレードである。

 注意しなくてはいけないのは、「フェイクニュース」というものは、核心部分(森友学園問題と首相サイドの違法的な関係)が間違いや偽物であっても、それ以外の部分は「真実」で構成されていることが多いことだ。これが報道を偽物であるか本物であるのか見分けを難くしている。

 実は、リフレ派はこの種のフェイクニュースに過去20年以上悩まされてきた。「デフレになったのは中国やインドから安い製品が入ってきたためである」「日本の産業がグローバル化に対応できないので日本は停滞している」「インフレ目標を導入するとハイパーインフレになる」などというものである。

 例えばインドと、中国発のデフレをみてみよう。インドと日本の貿易関係は、日本の経済規模からみて規模が小さい。2015年現在、輸出入総額が1兆円超程度で、純輸出はプラスであり、日本からの輸出の方が大きい。一方、中国と日本の貿易関係は巨額である。輸入額(2015年で20兆円近く)だけみても日本のGDPに対する比率は大きい。日本へ中国の安価な製品が流入していることは「真実」である。だが、安価な製品の輸入が多くても、それが日本経済全体の物価を押し下げていることにはならない。

 なぜなら日本よりも輸入規模がはるかに大きい米国や、日本の次の貿易関係国である韓国はデフレ経済に過去20年間陥ってきたわけではないからだ。韓国はむしろ中国との貿易関係が縮小している現段階の方がデフレ経済に陥る危機に直面している。このように中国発デフレは、真実(中国との貿易関係が大きいこと)でカモフラージュした、核心部分(中国がデフレの原因)がフェイク=偽、という典型的な主張である。
日本と中国、韓国の経済貿易相会合で握手する、(左から)中国の高虎城商務相、世耕弘成経済産業相、韓国の周亨煥産業通商資源相=2016年10月29日、東京都目黒区
日本と中国、韓国の経済貿易相会合で握手する、(左から)中国の高虎城商務相、世耕弘成経済産業相、韓国の周亨煥産業通商資源相=2016年10月29日、東京都目黒区
 同様に、日本の産業の中でグローバル化に対応できていない部門があってもおかしくはないが(真実)、そのこととデフレが関係するわけではない(フェイク)。これは経済学的には財やサービスの総供給面に問題があるということだが、実際の日本経済では総需要が不足していることで、まず簡単に否定できる。

 さらに、インフレ目標を導入すればハイパーインフレになるという主張も、これは単にすべてデタラメであったことは自明である。だが、この種の主張もインフレ目標が導入される前は執拗(しつよう)に報道されていた。