とりわけ、最近のフェイク的な経済報道として筆者が注目しているのは、しばしば世論調査で出てくる「景気回復の実感がない人が多い」というものだ。このとき報道の多くが、「景気回復の実感」とはそもそも何かを定義することなく、印象だけを流していることに注目すべきだ。
 人によって景気の実感はバラバラだろうし、個々人の感覚は正しいかもしれない。だが、個々の実感と経済全体の景気回復をイコールにしてしまうのは間違いだ。仮に、1年や数年で給料が倍になることを「景気回復の実感」だと思う人がいるとしよう。もしこれを経済全体にまで拡張したらどうなるだろうか。

 「マジックナンバー69」というものがあって、これは給料や経済規模が倍になるための成長率を導き出すのに便利な数字である。一例で、年間の経済成長率が3%であれば、3で69を割ると23になる。つまり23年かければ、その国の経済規模が倍になるということである。

 もし1年で給料が倍になることを「景気回復として実感する」ならば、日本経済は年間69%も成長しなくてはいけない。先進国の平均的な成長率がだいたい3%前後の中で、このような超高度成長は単なる夢物語にすぎない。もちろん個々人がこのような収入を実現できることを否定しているのではない。個人の景気への実感が、何の定義もされることなく安易に独り歩きをすることを警戒すべきだといいたいのである。

 ちなみにリフレ派の目指す経済状況は、(論者によって異なるが)実質経済成長率が3%前後になれば上出来であり、またそのときには完全雇用に達し、なによりもその状況が長期的に安定化することが目的となるだろう。