他方、北朝鮮の戦略目標もこの20年で変化した。当初、北朝鮮は核兵器開発を放棄するのと引き換えに、体制の保障と経済支援を求めてきた。しかし、今の北朝鮮は、国際社会に自らを核保有国であることを認めさせた上で、米国との一種の核軍備管理交渉を目指していると考えられる。それによって北朝鮮は生き残ろうとしているのであり、米国を交渉に引きずり出すためには、米本土を核攻撃できる能力を持つことは不可欠なのだ。

 トランプ政権は「力による平和」を掲げる。それはオバマ政権には欠けていたことだったし、オバマ政権が軍事力の行使に慎重でありすぎたことが、今日の安全保障環境を悪化させたとするトランプ政権の認識もある程度正しい。しかし、トランプ政権には安全保障に関する全体的な戦略が描けていない。仮に、戦略もなく、軍事力の行使を脅しのために使っても、これまでのレッドカーペットをさらに長くするだけだ。一方、事態の打開のために北朝鮮に対して空爆を行えば、大きな被害と混乱を北東アジアにもたらすだろう。

米国単独の外科手術的な軍事力の行使を検討するだけでは不十分


 北朝鮮の非核化を実現するためには、米国単独の外科手術的な軍事力の行使を検討するだけでは不十分だ。まずは、日米韓が北朝鮮を核保有国として認めないことを確認し、その上で、金正恩体制を維持するのか取り除くのかという戦略目標を検討しなければならない。さらに、実践可能なレッドラインを設定し、北朝鮮がレッドラインを越えた場合に備えた共同作戦計画も必要だ。もちろん、北朝鮮による報復への備えに加えて、紛争後の構想、非戦闘員の避難、難民対策など、この20年の宿題も早急にこなさなくてはならない。

 北朝鮮以外のどの国も現状維持を望んでおり、北朝鮮に対する本格的な武力行使など考えたくもないだろう。混乱する韓国の国内情勢と、日韓関係の現状では日米韓の連携が難しいことは明らかだ。しかし、これこそが北朝鮮の望んでいる環境だ。日米韓が一体となって北朝鮮の非核化のためにリスクを取る覚悟を示さない限り、中国の協力を引き出し、北朝鮮に核開発を放棄させることはできない。