2017年2月、北朝鮮がアメリカに届くICBM(大陸間弾道ミサイル)の実験を行ったことは、これまでの米朝関係を変えた。

 トランプは北のICBMに関して「そうはさせない」とツイッターでメッセージを発信している。ならば「そうはさせない」という具体的中身は何か?

 選択肢は三つのシナリオが考えられる。

 第1は、ICBMを単なる北のブラフと認識する態度を続ける。
 第2は、北がアメリカと直接対話をしたいための信号であるという外交の駆け引きに対応する。
 第3は、前者二つの選択肢を無視して、実際にアメリカが予防的先制攻撃をする。

 つまり北朝鮮の核施設を空爆で破壊して、脅威をとりのぞくという軍事的選択である。アメリカの対北朝鮮攻撃は、おそらく潜水艦からのSLBM(弾道ミサイル)発射が主力となるだろう。

4月15日、北朝鮮の軍事パレードで公開された
新型ICBM用の可能性がある発射管付き車両(共同)
4月15日、北朝鮮の軍事パレードで公開された 新型ICBM用の可能性がある発射管付き車両(共同)
 実際にこれまでも、北朝鮮の核施設攻撃オプションはペンタゴンで何回か立案された。だが、ときのクリントン政権は土壇場で回避し、オバマ政権ではタブー視された。

 ところが北朝鮮が六者会合を無視し、中国の政治的圧力を避け、ついに今回、ICBMのレベルまで達すると、予防的先制攻撃の選択肢が、アメリカ内で公然と論じられるようになった。「フォーリン・アフェアーズ」でも論究されるとなると、ペンタゴンでもシナリオが存在しているに違いない。

 トランプならやりかねない、というのが国際政治の現場感覚だろう。

 しかし先制攻撃というシナリオを前にして、アメリカが直面する三つの難題がある。

 第1は、中国がどう動くか。これまでに、「中国が北朝鮮を抑制し、影響力を行使すれば、やめさせることができた。なのに、しなかった」(トランプ)。

 もちろん中国もこの北朝鮮の核こそが、対米交渉の有効なカードである以上、へたな使い方はしないだろう。

 第2に、韓国がいかなる反応をするか、つまり北朝鮮攻撃作戦遂行後、米韓関係は緊密化するか、対決となってしまうのか、である。現実に朴槿恵(パククネ)政権は弾劾(だんがい)の淵に立たされ、命運が尽きようとしているが、次期韓国政権は親北派の勝利が予測されている。火に油を注ぐ結果が明らかな現状で、アメリカは軽率な行動はとれそうにないように見える。

 第3は、「全面戦争」への発展をアメリカは考えていないという前提から発生する諸問題だ。つまり攻撃後の北朝鮮の報復は必ず行われ、韓国へ侵攻するだろう。そのときに在韓米軍はどこまで耐えるか。北朝鮮からソウルは距離的に近く、また地下トンネルが無数に掘られている。メトロポリタン・ソウルという人口密集地(1400万人)が人質となるが、その犠牲を恐れずにアメリカが先制攻撃を行えるかどうか。

 1981年、イラクのオシラク原子炉をイスラエル空軍機が破壊した。アメリカ軍の秘密の協力があった。2007年、シリアの核施設をイスラエル空軍機が破壊した。むろん、背後ではアメリカ軍の協力があった。しかしイランの核施設はイスラエル側に破壊能力があるのに、できなかった。

 北朝鮮の核施設の正確な場所を把握していないかぎり、作戦の成功もまた難しくなる。こう考えてくると、残されるのは、北朝鮮を交渉の場に引きずり出し、中国にも圧力行使を期待しての「核の凍結」という選択肢がもっとも現実的なことになる。