また、憲法26条2項後段は「義務教育は、これを無償とする」と定めるが、これを改正して、教育費の無償化を義務教育だけでなく高校、大学にも拡大する旨の提案がなされている。教育費の無償化を拡大するという内容自体には異論は少ないだろう。しかし、この政策は、わざわざ時間とコストをかけて憲法改正に訴えなくても、法律を定めればすぐに実現できる。そのような法律は、憲法に違反しないからである。しかしそれが実現しない理由には、財政上の制約があるからだろう。その点を無視して、一足飛びに、法律であれば将来容易に改正が可能となるので憲法で保障をするのだ、と主張するのは無責任ではないか。

 むしろ、この政策に本気で取り組むつもりがあるのであれば、法律によって直ちに無償化を実現して、そのあと様子を見る方が実際的ではないか。現に、義務教育における教科書の無償は、憲法26条2項の保障には含まれないとされたものの、1963年に法律が定められて以来、50年以上にわたり定着しているところである。教育費の無償化の拡大という政策についても、これと同じ道筋をたどって実現、定着させることは十分に考えられる。

 繰り返すが、「その改築をするために、本当に土台や柱、はりに触れなければならないのか」という視点が重要である。そしてそこでは、一本の柱やはりばかりに目を向けるのではなく、なんのためにそれに触れるのか、それにより建物のバランスは崩れないか、建物全体を眺めたトータルな議論と検討を、専門家の意見も参考にしながら行うのが望ましい。

 とはいえ、築70年の建物全体を見渡してどこかにガタがきていないかチェックを行い、必要なメンテナンスを検討することは、もちろん大事なことである。その中で一つ気になるのは、国会のあり方である。上記の通り、三権のうち、行政部、司法部については、行政改革、司法改革によって「バージョンアップ」が行われたが、立法部の改革は一向に進んでいない。

 立法手続では、政府提出法案の国会提出前に非公開の与党政調部会で行われる事前審査で法案の内容が固められてしまい、国会提出後の法案修正には応じないのが原則となっている。これに反対する野党は、会期が終わればそれまでに成立しなかった法案は廃案となるので、日程消化を目指すことになる。そして会議の日程とシナリオは、国会の公式の会議ではなく、これまた非公開の与野党国会対策委員会での話し合いで決められる。このように、立法手続は、国民の目に審議の内容が見えづらい不透明なやり方が続けられている。
国対委員長会談に臨む、自民党の竹下亘氏(中央右)、民進党の山井和則氏(同左)ら=4月21日(斎藤良雄撮影)
国対委員長会談に臨む、自民党の竹下亘氏(中央右)、民進党の山井和則氏(同左)ら=4月21日(斎藤良雄撮影)
 また、「官邸主導」という言葉の通り、内閣、内閣総理大臣の政治権力が強まる中、それとバランスをとるために、政策遂行に対して事後的に政府から情報提供と説明をさせて議論を行う行政監視(政府統制)という役割が国会、国会議員には期待される。しかし、実際にはこの機能もあまり果たされていない。グローバル化が進み、迅速かつ実効的な政策の立案と遂行が求められる状況下で、内閣や首相の政治権力が強まること自体は決して悪いことではないが、このような国会のありさまは、諸外国と比べても独特であって改善を要するものである。