さらに、これらに関連して、二院制(両院制)のあり方も問題となる。日本国憲法の定める二院制は、内閣総理大臣の指名、法律、予算、条約の承認の議決で衆議院が優越し、また内閣不信任決議権をもつのも衆議院だけとされている。しかし、法律の議決については、憲法59条2項が、「衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる」と定めており、衆議院が勝つためには3分の2以上の多数の支持が必要となる。
2016年7月10日、参院選の投票所で一票を投じる有権者=大阪市内の小学校(村本聡撮影)
2016年7月10日、参院選の投票所で一票を投じる有権者=大阪市内の小学校(村本聡撮影)
 参議院で野党が過半数を占める「ねじれ国会」となったとき、この規定があるために衆議院で多数を占める政府=与党は、法律を野党の協力なしには成立させることができない事態に陥った。このような状況を「決められない政治」として批判するならば、両議院の役割と関係を整理し直す必要があることになるだろう。

 もちろん、これらの国会改革も、憲法を改正せずに実現可能だ。立法手続や行政監視に関する改革は、議院規則や運用の修正によって、憲法改正によらず実現することができる。二院制についても、「ねじれ」が起きて、ある法律案に対する賛否が両議院で異なる場合に、両院協議会を開いて議論をしても衆議院が譲らないときには最終的に参議院が譲るといった、参議院がその権限行使を自制する慣行を作り、当事者である政治家たちがこれを守るべきものとして捉えて規範(「習律」と呼ぶ)に高められることができれば、憲法改正によらなくても両議院の関係を整理することが可能である。

 しかし、現在までの政治の流れを見る限り、政治的に強い力を持つことを覚えた参議院(議員)が、その力を自ら手放すことは考えづらい。そうであるならば、憲法59条2項を改正して、「三分の二」を「過半数」とすることが考えられる。あるいはそれだけだと参議院が弱くなりすぎる、というのであれば、衆議院の再可決を「参議院の議決から1年を経過した後に」として、冷却期間を置くことも考えられる。

 ある規範を法律ではなく憲法典で定めることの意義の一つとして、その規範に行政(政府)だけでなく立法(国会)をも拘束させることがある。憲法典は、行政や司法、地方自治といった国会以外の部門の権限や組織の骨格を定めることで、国会が法律の定めによってそれらを動かし変えることができないようにするだけでなく、国会の権限や活動のあり方そのものの骨格を定めることで、国会のあり方をも規定している。

 国会は、上で述べたように、その権限や活動を自ら律することで「バージョンアップ」を図るという方法を取ることもできるのだが、それがうまくいかない場合には、憲法典による拘束に訴える形で「バージョンアップ」を図らなければならない。憲法改正にもつながりうる重要な検討事項として、国会(議員)自らの権限や活動のあり方があることを、国会議員にはもっと自覚してもらう必要がある。