さて、マリーヌ氏といえば、昨今では元党首でマリーヌ氏の父であるジャン=マリー・ルペン氏との確執がしばしば話題となっている。ジャン=マリー氏は2014年、国民戦線を批判したユダヤ人歌手に対して差別的な発言を行い大問題となった。その後、マリーヌ氏は2015年10月に父親を党から除名。国民戦線を立ち上げた始祖であるにもかかわらず、名誉会長の座も剥奪されたことは不当だとして、父親は実の娘を訴え、親子の確執は最高裁の判断を仰ぐところまでもつれた。マリーヌ氏は、党のためひいては国民のために情よりも理を優先し、『泣いて馬謖(ばしょく)を斬る』ことのできる決断力の持ち主であるといえるだろう。私から見ると、マリーヌ氏は最初に会った13年前から、自分の思ったことをストレートに話し、凛(りん)として仕事をこなす、できるキャリアウーマンのような印象だった。父親はそんなマリーヌ氏に『わが政治家人生で唯一やり遂げられなかったのは大統領になれなかったことだ』と言って国民戦線の代表の座を譲った。

集会に出席するマリーヌ・ルペン=2017年5月1日、パリ近郊のヴィルパント
マリーヌ・ルペン候補=5月1日、パリ近郊のヴィルパント
 つまり、大統領になるためには自分とは違うやり方で戦えと悲願を託したのだ。だからこそ、マリーヌ氏は国民戦線のイメージを一新させ、柔軟性をもったアプローチで国民に訴えた。国民戦線には既成政党、共和党、社会党、共産党の出身者が入党し合流している。結集軸が同戦線にあるということだ。既成政党の多くがEU等のグローバリズムな体制に甘んじているのに彼らは耐えられなくなり、「フランスの社会、伝統、文化を守るのは国民戦線だけだ」と見定め、党を割って合流してきているのである。今回の大統領選も、もう建前だけでは前に進めないことを国民が理解し「利益共同体としてのEUにこだわるのか」、それとも「フランス人としての主権を取り戻すのか」、フランス全体にこの二者択一の選択を迫った局面があったと言えるだろう。グローバリズムからフランスを解放しようとする国民戦線こそがフランスを救う唯一の国民政党であるとして支持が広がることも、十分にうなずける。

 先述した今年2月のフランス訪問の際、私はリヨンで開かれた国民戦線の決起大会にも参加し、大会直前にマリーヌ氏と会見した。国民戦線の躍進については「われわれが長年主張してきたことが、国民にやっと理解されるようになったということだと思う」と語っていたのが印象的だった。さらに、マリーヌ氏は「私は日本を尊重しています。都合のよい時期に日本を訪問したい」と述べており、早ければ年内か来年にも来日する可能性があるだろう。愛国者としての立場から、日本人に対して現状認識を生の声で語っていただきたいと思っている。

 改めて、フランスでは国民議会選挙が行われる。第一回投票が6月11日、決選投票が18日。今回、多くのフランス国民がマリーヌ氏に寄せた期待がどのような影響を与えるのか。ここが重要なポイントになると思っている。今回の大統領選では結果的に、現在のEU政策を維持するマクロン氏が選ばれ、向こう5年間は政治をつかさどる立場となるが、現状に対する国民の不満が高まっている中で、フランスの舵取りは今後も厳しい局面が続くことが予想される。