さらにルペン氏は個人の権利や自由、中絶まで含めて女性の権利を擁護し、事実婚や性的マイノリティーに対しても寛容な姿勢を示した。自身も2回の離婚歴を持ち、服装もジーンズを好むなど伝統的な極右主義者の雰囲気は感じられない。

 これを受けて支持層にも一定の広がりをみせ、12年の大統領選挙では17・9%と父の02年の得票率を上回ってみせた。

 今回の選挙では、保守派の共和党がフィヨン前首相を候補者に選んだ。予備選ではポピュリスト的イメージで国民戦線の支持者とやや重なるが新自由主義的な経済政策を掲げたサルコジ前大統領、中道左派的でリベラルなジュペ元首相を退け、経済政策では誰よりも新自由主義的だがカトリックの伝統的な価値観に寄り添ったフィヨン氏が選ばれた。

 また、社会党のアモン前国民教育相はマリフアナ解禁や最低所得保障(ベーシックインカム)制度の導入といった特異な左派的主張を展開。すでに何度も大統領選挙に立候補していた急進左派のメランション左派党元共同党首もややアンチEU的だが移民には好意的な綱領を掲げた。そして、社会党を飛び出したマクロン氏は、親EU、移民に好意的、市場経済を生かしつつ合理化した上で社会政策を維持するという新しい路線を打ち出した。

 ただ、選挙戦が事実上始まってから、ルペン氏の票を一定割合食うとみられていたフィヨン氏が妻の架空雇用疑惑スキャンダルへの対応のまずさで沈没したことは、ルペン氏だけでなくマクロン氏をも利した。また、メランション氏が健闘したことで、ルペン氏はある程度の競合を余儀なくされ、やや精彩を欠いた。
5月6日、フランス北部エナンボモンの投票所前に張り出された大統領選候補のマクロン氏(左)とルペン氏のポスター(AP=共同)
5月6日、フランス北部エナンボモンの投票所前に張り出された大統領選候補のマクロン氏(左)とルペン氏のポスター(AP=共同)
 決選投票に残る候補者について、当初はフィヨン氏が確実でルペン氏が2位、マクロン氏がそれを追うとみられた。しかし、フィヨン氏の脱落で、マクロン氏とルペン氏が優勢となり、フィヨン氏とメランション氏の終盤の追撃を振り切ったが、僅差の結果に終わった。

 さて、今後のフランス政治の見通しだが、マクロン与党が左派中心か、共和党を大きく取り込むかたちとなるか分からないし、何より共和党がどのような路線で再建を図るかが問題だ。ただ、今回の選挙で、ルペン氏のEUやユーロ離脱(最終的にはユーロとフランの併用と言っていたが)のような非現実的で、経済の行方に不安を与える政策を放棄し、いずれも運用の見直しをドイツなどに迫るような方向に政策の舵を切れば、極右が不適切な保守政党として、いよいよ認知される可能性も少なくないだろう。