トランプ─馬─習近平


 クシュナーは新たなビジネスとして、医療や不動産検索のIT機器の開発に乗り出しているが、新事業に出資しているのが中国電子商取引最大手アリババ集団の馬雲会長である。馬の投資額は1830万ドルといわれる。
1月9日、ニューヨークのトランプタワーで会談後、握手するアリババグループの馬雲会長(右)とトランプ氏(ロイター=共同)
1月9日、ニューヨークのトランプタワーで会談後、握手するアリババグループの馬雲会長(右)とトランプ氏(ロイター=共同)
 馬といえば、今年1月、ニューヨークで、大統領就任前のトランプと会談した。彼は「中国には3億人以上の中間所得層と海外商品への旺盛な需要がある」などと語り、米国製の衣料品などを中国で売り込み、5年間でアメリカ国民100万人の雇用を創出する「BABA」計画について話し合ったという。トランプは会談後、馬と一緒に記者団の前に現れており、話し合いに満足した様子だった。

 その馬は習近平と極めて親しい間柄である。習近平が浙江省トップ時代、民間企業育成のために地元の優良企業に補助金を出す制度を設け、その第1号がアリババだった。

 当時の同社は経営規模が小さかったので、省政府からの補助金の話を聞いた馬は「なぜ、ウチのような会社に…」と習に漏らしたところ、「あなたが経営しているからだ」と習は笑顔を見せた。いまも習の外遊には経済代表団の一員として馬が随行することが多い。北京の外交筋は「トランプ馬会議も中国側の深謀遠慮とみてとれる」と指摘する。

 トランプは新たな政策提言機関として「大統領戦略・政策フォーラム」を設立。その議長は運用資産3千億ドルを超す世界有数の米大手投資会社「ブラックストーングループ」の会長兼最高経営責任者であるシュワルツマンだ。

 米大手投資会社であるリーマン・ブラザーズを辞めたシュワルツマンがブラックストーンを興す際、同社の株式の9.37%に当たる30億ドルを出資したのが、中国の政府系投資会社「中国資本有限公司」だった。ブラックストーンには多額の中国マネーが流れ込んでいるのだ。

 このためか、今年1月中旬、ダボス会議に出席した習近平は多忙なスケジュールの合間を縫って、シュワルツマンらと昼食をともにしたほどだ。シュワルツマンはまさにトランプと習近平を結ぶチャイナコネクションの重要人物なのだ。

 さらに、トランプ自身もクシュナーに劣らず、チャイナマネーに手を染めている。トランプの持ち株会社の株の3割に当たる約9億5千万ドル分は中国の4大国有銀行のひとつ中国銀行を中心とする中国資本が有しているという。ニューヨークのトランプタワーの最大のテナントの一つも中国最大の民間銀行、中国工商銀行なのである。

 強面のトランプだが、トランプ帝国には膨大な額のチャイナマネーが流れ込んでいる。紅い中国金脈がトランプ政権を蝕む日も遠くないかもしれない。

【PROFILE】そうま・まさる/1956年生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。産経新聞外信部記者、香港支局長、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員等を経て、2010年に退社し、フリーに。『中国共産党に消された人々』、「茅沢勤」のペンネームで『習近平の正体』(いずれも小学館刊)など著書多数。近著に『習近平の「反日」作戦』(小学館刊)。

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