ほかに、「同性カップルに育てられるなんて、子どもがかわいそう」という意見があったが、それは偏見と差別以外の何物でもない。親元で暮らせない子どもは、現在約4万5000人いる。《厚労省「社会的養護の現状について」(平成29年3月)参照》 

 その大半が児童養護施設で暮らしており、厚生労働省は「家庭的養護の推進」を掲げて、里親の増加に取り組んでいる。同時に、児童養護施設の小規模化など、環境改善もはかろうとしている。ただ、施設ごとに大きく環境が異なることや、性的マイノリティー児童の中には児童養護施設の集団生活が苦痛となる児童がいるなど(※注)、課題は山積している。児童養護施設の環境を改善していく取り組みと同時に、一つでも多くの里親家庭を増やし、子どもにとっての選択肢を増やすことは喫緊の課題である。

 そのような状況の中で、今回の報道は、一人のお子さんに安心して過ごすことのできる家庭が用意されたという喜ばしいものである。「同性カップルに育てられるなんてかわいそう」と言い放つ人は、「嫌がる子どもが無理やり連れ去られた」と想像しているのだろうが、それはとんでもない間違いである。

 なぜなら、里親認定を受け、委託の打診がなされた後、すぐに子どもが委託されるわけではないからだ。委託できるかどうか、慎重にマッチングが行われ、小さいお子さんであれば、半年くらいかけて、少しずつ家庭に慣れていく期間が設けられる。4月18日付朝日新聞によると、

男性カップルの里親だと説明を受け「抵抗感なく納得していた」という10代男子と引き合わせ、3人は今年2月から仲良く暮らしているという。

 と報じられている。お子さんが納得したうえでの委託となっているのである。

 「いじめられるからかわいそう」という声もあった。確かに「絶対にいじめられない」とは言い切れないだろう。

 イギリスの『Proud Parents』という本には、同性カップルとその里子のインタビューが収められている。同性カップルの里子、ウィル君(17歳)へのインタビューで、「(里親が同性カップルということで)嫌がらせはあった?」と聞くと、彼は「あった」と答えている。以下が、彼のセリフだ。

 「生徒たちが、僕がゲイカップルの里親と暮らしていることに気がついたんだ。彼らは僕をからかい、それは学校中に広がった。マークとキーラン(彼の里親)は学校に話をし、このこと(からかわれたこと)について連絡した。その後、その件は落ち着いた。最初にからかった生徒は注意を受けたよ」

 彼のセリフから、彼の里親や通う学校が、いじめにきちんと対応していることがわかる。

 ウィル君は、以前男女夫婦の里親のところにいたが、彼にとっては今のゲイカップルの里親のほうが自分に合うのだという。以前の里親が合わなかった理由は、「里親の小言が多くって、しかも田舎だったんだよね」だそうで、私はこのセリフを読んで、なんとも若者らしい発言だなと思った。ウィル君は、今の里親と初めて海外旅行に行ったり、日々の生活を楽しんでいる様子を語り、「まるで息子のように接してくれて、家族のようだ」と語っている。

 このインタビューは「いじめられるかもしれない」という理由のみで子どもが家庭で過ごすチャンスをつぶしてはいけない、ということを示唆している。また、いじめが起こったとき、子どもが親に自分がいじめられていることを言える環境や、親が学校にいじめについて話し、学校が適切に対応することがとても大切だということが伝わってくる。

(※注)RFCは「児童養護施設における性的マイノリティー(LGBT)児童の対応に関する調査」を実施した。集団生活になじめない性的マイノリティー児童の存在が明らかになっている。