例えば、財務省が「文書は廃棄済みであるから資料提出要請には応えることができない」と言っても、誰が信じるだろうか。文科省がそのような文書の存在は確認できなかったと言っても同じである。

 国有地を売却して1年も経過していないのに、しかも10年分割で売っているような案件なのに関係資料のほとんどを廃棄するなんてあり得ない。それに、まだ会計検査院の検査も済んでいないのだから、会計検査院ですら納得はしないだろう。

 そうなると、会計検査院の検査において、不合理な処分がなされた事案として指摘される恐れが出てくる。ただし、資料が不存在であるため、そうした不適切な処理がなされた原因の一つに昭恵夫人の関与があったということは明らかにはならず、その結果、安倍総理を守るという役割を果たすことは可能になる(仮にそうした事実があったとしての話)。

 野党の議員が役所の入館記録を開示しろといっても、財務省や内閣府は「即日廃棄するので記録はない」などとバカバカしい答弁をしていたが、誰がそんな答弁に納得するだろうか? 処分する合理的な理由がないからだ。

 もし、処分したとして資料の提出を拒否することがあるとしたら、それは資料を提出したくない、つまり資料の提出によって「不都合な事実」が明らかになるからに他ならない。

 ということで、仮に安倍総理が身の潔白を証明するにしても、自分は全く関与していないなんて言い方をしていなければ、役所としての対応の範囲がもう少し広がった可能性があるのだ。

 5月29日の参議院本会議で、加計学園の問題をめぐって安倍総理は次のように述べた。
 「特区の指定、規制改革項目の追加、事業者の選定のいずれのプロセスも関係法令に基づき適切に実施しており、圧力は一切ない」
 関係法令に基づき適切にと言ってはいるものの、多くの国民からすれば、個々の疑惑に一つひとつ明確に反論できない以上、納得はできない。圧力は一切ないと言っても、現実に前川氏が圧力を感じたからこそ敢えて記者会見までして自分の考えを世間に訴えているのだ。
会見に臨む前文部科学事務次官の前川喜平氏(左)=2017年5月、東京都千代田区(福島範和撮影)
会見に臨む前文部科学事務次官の前川喜平氏(左)=2017年5月、東京都千代田区(福島範和撮影)
 少なくとも前川氏の証人喚問抜きで多くの国民が納得することはあり得ない。

 総理及び官邸がうそを言っているかどうかは別にして、多くの国民が、総理がうそを言っていると心の底で思い続ける以上、日本は「偽装国家」の道を進み続けることになり、今後も粉飾決算を続けていた東芝と同じ運命に陥る企業、役所が続出することが懸念される。