しかし、何度か危機があった。最大の危機として歴史に名を残すのが道鏡事件である。称徳天皇の祈祷僧で愛人とも噂された弓削道鏡を、次の天皇に据えようとの陰謀が行われ、何とか阻止された。

 さて、世の中には女性宮家を創設し、その配偶者の民間人を皇族として扱い、さらに女性宮との間に生まれた子供も皇族にしようとの目論見がある。これは「制度化された道鏡」に他ならない。

 道鏡のように皇室を乗っ取ろうとする輩が現代に現れたら、女性宮を口説き落として皇室に入り込もうとする輩が出現しかねないと危惧する理由がわかるだろうか。女性宮家自体は先例があるので、絶対にやってはいけないわけではない。しかし、吉例であろうかどうかの検討は必要である。

 江戸時代、桂宮家が絶えそうになった時に、淑子(すみこ)内親王がお継ぎになられた。しかし、婚約者の愛仁(なるひと)親王がお亡くなりになられ、生涯を独身で通したので、桂宮家は断絶した。女性宮家を立てるのは良いが、配偶者が皇族でなければ、その子は皇族にはなれない。

 皇室の不文法に「君臣の別」がある。わが国の歴史で、民間人の男性が皇族になった例は一度もない。一方で、民間人の女性が皇族となった例は、古くは藤原光明子が光明皇后となられた先例にさかのぼる。今の皇后陛下が正田、皇太子妃殿下が小和田の苗字を持つ民間人から皇族になったように、女性は排除されていない。男系が絶対だからである。男系とはすなわち「男性排除」の論理に他ならない。
全国赤十字大会の会場に到着し、関係者の出迎えを受けられる皇后さま=2017年5月
全国赤十字大会の会場に到着し、関係者の出迎えを受けられる皇后さま=2017年5月
 それだけに女帝の運命は過酷である。歴代八方の女帝はすべて未亡人か生涯独身である。推古、斉明、持統、元明の四方は即位された時に未亡人であった。全員、配偶者は皇族である。だから、自分の子供は皇族であるし、皇位を引き継がせてよい。

 一方、元正、称徳、明正、後桜町の四方は、生涯独身であられた。自分の愛人を天皇にしようとした称徳天皇のようになられては困る。また、結婚した男が道鏡のような野心を抱いても困る。元正、明正、後桜町の御三方とも、自らを律した。「眞子内親王殿下には皇籍に御残りいただき、女性宮家の先鞭をつけていただきたい」とは、小室さんを道鏡にしようということか。一番迷惑するのは小室さんだろう。

 また、「眞子さんと小室さんの間に生まれた子供に皇族になっていただき、皇族の減少を防ごう」などという暴論が許されるなら、摂関政治などと言う迂遠(うえん)なやり方は必要なかったではないか。平安時代に権力を誇った藤原氏は、「自分の娘を次々と天皇の妻に送り込み、その二人の子を天皇に据える」ということを繰り返した。皇室は男系継承が絶対だからである。