ここには巧妙な論理のすり替えがあります。私の発言は自民党若手議員の勉強会の場でのものとはいえ、それはあくまで「私的な会合」です。その発言は公式のものではないし、不特定多数に向けてのものでもありません。私自身が沖縄の二つの新聞に過去、さんざん悪口を書かれてきたことに対して、一言冗談で恨み節を述べたものにすぎません。実際、沖縄の新聞に対してどうするかというようなことは一切言及していません。当たり前ですが、私には沖縄の新聞を潰せる力もありません。
2015年6月、自民党の「文化芸術懇話会」であいさつする百田尚樹氏(斎藤良雄撮影)
2015年6月、自民党の「文化芸術懇話会」であいさつする百田尚樹氏(斎藤良雄撮影)
 しかし、ARICは実際に実力行使して、私の講演を潰したのです。これを同列に並べることこそ、「チャンチャラおかしい」ものです。

 漫画家の小林よしのり氏は、「言論弾圧とは政治権力が民間に対して為すもので、これは言論弾圧にあたらない」という趣旨のことをブログで発表したようですが、これも無理があります。「言論弾圧」は何も政府がするものだけとは限りません。民間の人物や団体が不当な圧力でもって、他者の発言を封じてしまう行為もはっきりと言論弾圧と言えるものです。
 
 公正を期して書いたつもりですが、もしかしたら被害者寄りの書き方になったかもしれません。そう受け取られたならご寛恕いただきたい。

 この事件は第三者的には、たいした事件ではないのかもしれません。大学祭での一作家の講演が中止になったというだけのことですから、これ自体は大袈裟に騒ぐほどのことでもないとも言えます。

 しかしながら、この事件は危ないものを内包しています。というのは、これが前例となり、ARICのような団体が、自分たちの気に入らない人物の発言を封じてしまうようなことが常習化する危険性を孕んでいるからです。

 これは決して大袈裟に言っているのではありません。この事件を多くのマスコミが見逃せば、やがてこういう事例が頻繁に起こることになるでしょう。気が付けば、自由に発言できない空気が生まれているかもしれません。そうなった時、「ああ、あれが最初だったか」と思っても、その時はもう手遅れです。