卑劣な攻撃を恐れるあまり事なかれ主義に陥る政治


 しかしそれはそれとして、じつはこれから述べることが、本稿の最も重要な点です。反日メディアの攻撃方法が卑劣だとして、では彼らが指摘する「現政権と在特会とのつながり」という問題は、まったく根も葉もない妄想にすぎないでしょうか。現実の舞台裏については私は知りません。ここでは、あくまでも思想的な関連という意味で、つながりが皆無とは言えないだろうということを指摘しておきたいのです。

 政治家たちは政治的な理由から、こうした民間団体と自分とは無縁だと強調します。その配慮も理解できなくはありませんが、実際には、在特会の主張のうちのまともな部分、つまり、在日韓国・朝鮮人が種々の特権を手にしているという主張は事実なのですし、その不公平性と日本国民がこうむる不利益とは、自民党内でも問題とされているはずです。だからこそ、先述のような帰化促進のための法案が構想されたりもするわけです。

 こうした関連性をまったくないものとして、在特会のほめられない行動の部分だけを根拠に、私たちとは無縁だとして切り離すことは、「臭いものには蓋」の事なかれ主義ではないでしょうか。在特会その他の団体は、トカゲのしっぽとして切られて、いっそう過激化するかもしれません。むしろ政界ではなかなか公にしにくい本音の部分を在特会が代弁して問題提起している事実を堂々と認めて、それではどうすべきかというように議論を発展させるべきだと私は思います。

 この問題についての二つの参考例を出して、それについて私見を述べましょう。一つは、10月22日にTBSラジオで放送された「荻上チキ・Session22『在日韓国・朝鮮人の戦後史』」という番組で拾われている橋下徹氏の考え方です。ちなみにこの番組には二人のゲストスピーカーが出てきて「在日問題の歴史的経緯」をしきりに強調していながら、ほとんどは制度史的な側面の説明に終始していて、戦争直後の混乱期に密入国者や治安攪乱者や犯罪者がいかに多かったかとか、現在、在日の人たちが具体的にどれだけの特権を手にしているかなどの現実的な問題にはまったく触れておらず、橋下氏や在特会を批判するために仕組まれたとしか思えない偏向番組です。

 さて橋下氏はこの中で、「いろいろな歴史的経緯のもとに特別永住者制度がもうけられたので、それを根こそぎ否定することはできないが、同和対策事業と同じで、ある程度時間が経つと特別視することはかえって差別を生む。すでに現在では日本も韓国も主権独立国家として互いに認めているのだから、通常の外国人と同じに扱うようにじっくり時間をかけて永住者制度のほうに一本化すべきである」という趣旨のことを述べています。この橋下氏の見解には、前半は完全に同意できます。しかし後半は、在日の人たちが実質的には日本人であるとか、じつは日本を離れたくないと思っている人が多数であるといった現状を十分踏まえたものとは思われません。

 もう一つは、本誌前号(12月号)掲載の衆議院議員・次世代の党の桜内文城氏の論文「遵法精神なき外国人への生活保護支給を憂う」です。氏は次のように述べています。

 《私達は外国人を排除するために外国人への生活保護の適用をなくすべきだと主張をしているのでは決してありません。むしろ逆で、法律に基づかない行政判断に依らずに、外国人の保護は立法府の審議を経た別の法律できちんと根拠づけてやりましょうといっているのです。私達が提案し、成立を目指しているのは外国人緊急支援法(仮称)という法律です。生活保護は国民のための制度であるから外国人をその対象にはしない。しかし、生活保護とは別に急に外国人が生活に困った場合には生活保護に準じる措置を一定期間に限って認める。そういう法律を作って、法的根拠があるなかで外国人の保護を図っていく。》

 この考え方にも一定の説得力があります。橋下氏の理念を生活保護という具体的問題に反映させるならば、その限りで整合性を示していると言えるでしょう。しかしこの場合にも、在日の人たちを本国の韓国・朝鮮人と同等の外国人とみなしており、その特殊性を考慮していないという問題点があります。氏は同論文の中で、「日本に帰化して国籍を取得するならば、いざ知らずそういう日本に敵意を持っている国家の国籍を持ち、忠誠を誓うなり、帰属意識を持っているわけでしょう。(中略)何でそういう国の人々(中略)を日本の税金で保護しなければならないのでしょうか。」と訴えていますが、これは必ずしも当を得ていません。いま在日の人たちのほとんどは、すでに二世、三世、四世であり、特に韓国の場合に言えることですが、本国に対する忠誠意識や帰属意識などほとんど持っていないと思います。しかも韓国からは差別されており、日本での永住以外に道はないというのが大方のところでしょう。私は何人か在日韓国人を知っていますが、彼らのうちに韓国への明確な帰属意識、忠誠意識を見出すことはできませんでした。

 ただ、在特会のまともな主張の部分を取り上げず、その乱暴なパフォーマンスの部分だけをメディアに突かれて、その団体とは無縁であるかのように振る舞う政治家たちに比べれば、この二つの主張は、彼らの問題提起をよくくみ取っていると評価できます。