さて、特定の信仰を有しないと考えている日本人は今日確かに多く、このことは社会調査によっても裏付けられている。近年の調査結果を見てみるならば、統計数理研究所による「日本人の国民性調査」(第13次調査、平成25年)では信仰や信心を「もっている、信じている」と答えた人の割合は28%だった。

 また、読売新聞による「全国世論調査」(第10回、平成20年)では「何か宗教を信じている」と答えた人の割合は26.1%。國學院大日本文化研究所による「学生宗教意識調査」(第12回、平成27年度)では「現在、信仰を持っている」と答えた大学生の割合は10.2%であり、いずれも信仰を有していると答えている割合は少ないことがわかる。

 ところが逆に信者ではなく教団側の視点から見てみると、日本人の宗教信者数はむしろ極めて多いことにもなる。宗教法人をほぼ悉皆的に対象とした文化庁の調査によれば、平成26年12月31日現在のわが国の宗教団体の「信者数」は、神道系9216万8614人、仏教系8712万6192人、キリスト教系195万1381人、諸教897万3675人の計1億9021万9862人である(文化庁編『宗教年鑑 平成27年版』)。

 総務省による平成26年10月1日現在の日本の総人口推計は1億2708万3千人であり、文化庁の調査による日本の宗教団体の信者数は日本の総人口をはるかに超えている。この一見奇妙な信者数に関する調査結果は、まず、信者の定義自体が調査対象の宗教団体にゆだねられた自己申告による数字であることによる。
 同年鑑は、「信者は、各宗教団体が、それぞれ氏子、檀徒、教徒、信者、会員、同志、崇敬者、 修道者、道人、同人などと称するものの全てを含んでいる。信者の定義、資格 などはそれぞれの宗教団体で定められ、その数え方もおのおの独自の方法がとられています」と説明している。宗教団体によっては、実際の信者数よりもかなり「水増し」した信者数を申告することも少なくない。

 しかし、人口を超える信者数については「水増し」申告だけに還元できない要因もある。「家の宗教」および多元的・重層的な日本の宗教文化という要因である。個人的にある宗教の信者であるという自覚がなくても、属する家には宗教があることが多い。

 江戸時代の寺檀制度などの歴史的経緯から、家は地域の神社の氏子として、また先祖の墓のある檀那寺の檀家として、それぞれ位置づけられていることが一般的である。つまり、日本人の多くは、本人が自覚的であるか否かに関わらず、地域の神社の氏子であると同時に家の檀那寺の檀家であることが多い。

 何らかのきっかけでそれを自覚したとき積極的信仰に目覚めることは少なくとも、そうした位置づけられ方を積極的に拒否する人も少ない。こうして、日本人の多くは、「家の宗教」と多元的・重層的な宗教文化によって、地域の住人=氏子、家の一員である=檀家とみなされ、一人が神道の信者でもあり仏教の信者でもあるということになる。人口を上回る信者数は、こうした要因にもよるのである。