ともあれ、小池氏が政党を率いて都議選に臨むことが明確になった。このように知事が自ら政党を結成して、議会を支配しようとすることはあまり例がない。ただ、人気のある首長に特有の現象であるといってもよいかもしれない。橋下徹前大阪市長や、河村たかし名古屋市長などの例が記憶に新しい。他の首長は、政党の支持は受けているものの、あえて無所属として立候補し、議会との関係に一線を画すような配慮をしていることのほうが通例のように感じる。こうした理由をあわせて考えてみよう。

 地方政治は、国政と違って「二元代表制」を採用している。すなわち首長と議会の二つの代表を住民が直接選挙によって選ぶことで、両者が互いにチェックすることで住民に寄り添った、よりよい政治を実現しようとするのである。議院内閣制を採用している国政では、衆議院と参議院の「二院制」によって、独裁的な政治にならないように互いにチェックすることでより民主的な政治の実現を目指している。二院制を採用する余裕のない地方自治では、二元代表制によってチェックしているといっても過言ではないだろう。

 首長が政党を率いて議会の第一党を目指すことは、この二元代表制を否定することに他ならない。確かに、首長が自らの政策を実現するために、議会でも応援勢力を増やそうとすることは理解できなくもない。「決める政治」を実現するためには、もっとも合理的で確実な方法だからである。

 しかし、一方で独裁に陥る危険性もある。小池氏は、今までの都政が、都議会自民党と自民党の応援する知事によって運営されてきたために、「頭の黒いネズミ」が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)してきたと批判することで、都知事選に立候補して都民の信託を得たのではなかったか。そうならば、都議会を自らの政党によって多数派を占めようとするのは、同じ轍(てつ)を踏むことにならないのだろうか。
「都民ファーストの会」の東京都議選公認候補者向け研修会で講演する小池百合子知事=5月3日、東京都新宿区
「都民ファーストの会」の東京都議選公認候補者向け研修会で講演する小池百合子知事=5月3日、東京都新宿区
 知事は自らの政策を議会に説明して理解を求める。議会は、住民の利益を考えてより良い政策になるように議論する。こうしたプロセスが住民のための政策を策定し、実行することになる。自らの政党が議会の多数派を占めるようになれば、まして首長の人気に頼りきりの政党であればなおさらのこと、独裁のような体制になってしまうのではないか。本来の制度が持つチェック機能が、働かなくなる恐れがあるからだ。これでは「住民ファースト」ではなくなってしまうかもしれない。