ただ、以上のような事情からだけでは豊田氏の異常な言動を説明することはできない。つまり、新人議員粗製乱造システムによって適正のある議員が選ばれることの方が難しいからだ。また、安倍総理の個人的な資質が多くの新人議員の言動に相当な影響を及ぼしていることが事実であったとしても、豊田氏の言動は、そもそも議員になる以前から相当に常識はずれであったことがかつての同僚や部下たちの発言から明らかになっている。

 豊田氏は少なくとも厚生労働省にいたときから部下を怒鳴り散らすなどの言動が頻繁に見られていたのだ。では、そうしたパワハラまがいの言動をどうしてするようになったのか。

 豊田氏のケースに限定せず一般論を言わせてもらえば、本省採用のキャリア官僚は、自分たちは一般職員とは全く違うというエリート意識を持っている者がほとんどであり、また、そうしたキャリア官僚の中には、一部とは言え、自分たちは他の人間とは違うと、あからさまに見下すような態度をとる人間がいるということだ。実際に私は、こうした一部のキャリア官僚が、他人の人間性を全く否定するかのような言葉で部下を罵倒する現場に何度も遭遇したことがあるのでわかるのだ。

 では、そのような傍若無人の態度を取って、職場で問題にならないのか。通常、このような暴言が問題になるのは、極めて稀(まれ)だと言っていい。というのも、そのような鼻持ちならない一部のキャリア官僚は、普通、上司には精一杯ゴマをすり、気づかれずに済むことが多いので、職場内で問題になることはまずないからだ。つまり、上司や組織からそうした暴言が注意されることは一切ない。その代わり、常に部下たちのアフターファイブで愚痴の対象にはなる。どれだけノンキャリたちの酒の席での話題になっていることか!
霞が関の官庁街
霞が関の官庁街
 まあ、役所は2年程度で人事異動が行われるのが普通だから、1年もすれば自分が異動するか、問題の上司が異動するかと思い、我慢することが普通だ。最悪2年たてば、どちらかが少なくとも変われるであろう、と。

 しかし、事実は小説よりも奇なり。私の場合、福岡にある出先機関のある課に2年間勤めた後、東京にある出先機関に異動になったことがあるが、なんという偶然か、私の上司である部長も同時に東京の出先機関に異動になり、再び私の上司になったことがあったのだ。まあ、そのときの上司は格別暴言を吐くタイプではなかったので、問題はなかったが。

 ところで多くの人は、豊田氏の東大卒、厚労省入省、そして、ハーバード大大学院留学という経歴をみて、なんと華麗な経歴で、超エリートなのだと思ってしまうに違いない。これまでトントン拍子で人生を歩んできて、挫折など経験したことがないと勝手に思い込んでいるのではないだろうか。

 彼女が実際に挫折を経験したことがあるかどうかは知らないが、一般論として言えば、財務官僚(大蔵官僚)といえども、全く挫折を経験したことのないという人がどれだけいるのだろうか。本当の意味での超エリートというのはほんの一握りではないかと思う。

 私はかつて環境庁に課長補佐として出向していたことがあったが、そのときに、私と同じように大蔵省から課長が出向してきたことがあった。その課長に、勝手な想像で「課長は今まで挫折など経験されたことがないのでしょうね」と言ったことがあるが、そのとき「いや、高校受験で志望校に落ちた経験がある」と言われて驚いたことがある。

 ただし、その後、東大法学部を卒業し、大蔵省に入省した訳であるから、世間の尺度からすれば超エリートなのだが、それでも途中で挫折を経験したことは事実なのだ。