それ以外にも、財務省OBで有名な方にもいろんな経験をした人がいる。例えば、かつて通貨マフィア(財務官)として名を馳せた行天豊雄氏(東京銀行会長、国際通貨研究所理事長を歴任)も、最初は東大の入試に失敗して早稲田にいったん入学した。その後、再び東大に入り直しているし、政治家の中山恭子氏(日本のこころ代表)は、東大文学部を卒業後、外務省勤務(外務省キャリアではない)を経て大蔵省に入省している。

 また、たとえ中央省庁にキャリアとして採用されても、多くは事務次官や局長になるコースを外れた道を歩んでいることが年を経るにつれ明らかになるので、ある種の挫折感というか諦めを感じるのである。そして、事務次官や局長になる可能性が小さいなと自覚するようになると、中には国会議員になる道を目指す者も出てくる。

 中央省庁勤務を経て国会議員になるといかにも華麗な道を歩んできたかの印象を抱く人が多いと思うが、今述べたように、次官や局長になる可能性がないと気が付いたから国会議員になったという人も多いのだ。だから、役所ではかつて、事務次官になる方が大臣、ましてや政務次官になるよりも難しいなんて言われたものなのである。このように一般の人々の高級官僚を見る目と、彼ら自身がどう感じているかには相当のギャップがあるのが現実なのである。

 そういえば、今回の豊田氏の不祥事の報道を聞いて、ひどい上司は役所だけでなく民間にもいる、なんて話をかつて役所に出向していた人から聞いたことを思い出した。ある都市銀行の支店での話であったが、ノルマを達成できなかった行員さんたちが机の上に正座させられることがあった、と。今から28年ほど前の話なのだが、日本社会が未だに似たような状況にあることを再認識してびっくりした次第だ。

 こんなことを言ってはやや言い過ぎになるかもしれないが、安倍総理の財務省いじめも似たような性格を有するのではないのか?如何に財務省が官邸からいじめられていたかは元財務官僚の山口真由氏が証言している。

東京・霞が関の財務省
東京・霞が関の財務省
 私の経験からすれば、日本にはそういった職場のいじめっ子である上司には逆らわないという文化があるように思われる。逆らっても逆に問題をこじらすだけだからじっと耐えているしかないのだ、と。私は、かつてそのような類の上司に遭遇したことがあるが、そんな輩(やから)は、こちらが下手に出るから益々恫喝的な態度に出るのだ。だから、偶には毅然として反抗することも必要なのだ。

 超エリートたちは、まさか部下が反抗するなんて思ってもいないので、実際に反抗的な態度を取られると対応に困るのだ。もちろん、そうして反抗するからには辞職も辞さない覚悟が必要だが、その代わり相手が態度を変えるかもしれないのだ。

 ひと悶着が起きる可能性があるが、いじめられて精神的にダメージを受けるくらいなら、その方が、自分のため、そして職場のためにもなり、多いにプラスになると今でも信じている。

 今回、音声データを公表した元秘書を悪く言う向きもあるが、そのような意味で私は決して悪い行為だとは思わない。豊田氏にとっても、それをきっかけにして反省することになるならば、本当に良い薬であろう。