いくつかの地域で、都民ファーストの候補者演説を聞いた範囲では、都政のさまざまな課題についての詳しい見識を持っているわけではなく、「小池知事と一緒に東京大改革を実現する都民ファーストの会です」というような、抽象的な内容しか話していない候補もいた。

 豊洲市場の移転問題にしても「小池知事の意向を尊重する」というようなスタンスでは、地域政党とはいえ「小池知事のお抱え議員集団」というそしりは免れまい。

 その二元代表制の本旨からいえば疑問とされるような都民ファーストが、都議会第1党となった。今後は、都議会第1党として知事へのチェック機能も果たしていかなければならないが、果たしてそれができるのだろうか。

 過去の選挙を振り返ってみても、「ブーム」は何度もあった。1993年6月27日に行われた都議選では、「日本新党ブーム」で日本新党が公認だけで20議席を獲得、自民党、公明党に次ぐ都議会第3党となった。その立役者となったのが当時、日本新党の参院議員だった小池氏だが、その後の衆院選での「新党ブーム」の先駆けとなった。

 2009年7月12日に行われた都議選では、民主党が54議席を獲得して都議会第1党となり、自民党38議席、公明党23議席を合わせても61議席と過半数割れにまで追い込み、その後の「政権交代」の序曲となった。

 だが、こういった「ブーム」がもたらすものは、経験不足の新人議員の大量生産だ。日本新党も民主党も、新人議員が大量に誕生したものの、その4年後の都議選では惨敗している。

 小池知事の支持率はいまだに高いものの、都議会自民党はこれからも豊洲と築地の併用案に「都民の税金を無駄遣いするのか」と厳しい姿勢で臨む可能性がある。小池知事の意向を実現するための都民ファーストだが、もし小池知事への支持が失われたら、それでも都民ファーストに存在意義があると言えるのか。

 「小池チルドレン」と言われる新人議員が多くを占める中で、次の選挙を戦う足腰を鍛えることはできるのか。既成政党のように、政策を学び、都庁と渡り合いながら政策を実現していく教育機能を都民ファーストは担うことができるのか。小池知事の意向に従うだけなら、単なる頭数だという批判も浴びることになる。
「都民ファーストの会」総決起大会で公認候補者とフォトセッションに臨む、小池百合子都知事=6月1日、東京都目黒区(川口良介撮影)
「都民ファーストの会」総決起大会で公認候補者とフォトセッションに臨む、小池百合子都知事=6月1日、東京都目黒区(川口良介撮影)
 小池知事の第三のアキレス腱、都民ファーストは断裂の危険性を抱えながら小池知事と二人三脚で歩みを進めていくことになる。

 運とメディア戦略で都議選までを乗り切った小池知事。1年間は選挙キャンペーンを上手に展開したが、このまま順調に進んでいることはできるか。4年間の任期をこれまでのような選挙キャンペーンのノリで乗り切ることはできまい。都知事としてのかじ取りが、これからさらに厳しく問われることになる。