安倍首相は、12年秋の自民党総裁選からこのインフレ目標の導入を掲げて総裁選に勝利した。そして政権の座に就いてからも日銀にインフレ目標の導入を事実上迫り、そして日銀の人事管理(正副総裁選出)を通じて導入の実現に成功した。13年のインフレ率の改善は目覚ましかった。これはインフレ目標によってそれまでとは違い、マネタリーベースの水準と物価水準の相関がよみがえりつつある状況になったといえる。ただ残念ながら、それを妨害したのは財政政策の失敗、つまり消費増税である。

 ところで仮にマネタリーベースの水準と物価水準の相関がよみがえり、簡単にいうとマネーを増やせば物価もそれに応じて増加する世界になれば、石破氏の主張するようにハイパーインフレになるのだろうか。それはただのトンデモ理論である。

 過去のハイパーインフレの経験をみると、物価が急速に上昇するまでに1年以上の時間の遅れがある。つまりその間に金融引き締めを行えばいいのだ。さらに、インフレ目標自体が重要になってくる。アベノミクスで、マネタリーベース水準と物価水準の相関が戻りつつあるのは、インフレ目標の成果だといま解説した。インフレ目標は現状では、対前年比2%の物価水準を目指す内容である。2%のインフレ目標の導入自体が、ハイパーインフレを起こさない強力な手段になっていることは論理的にもおわかりだろう。

 つまり石破氏のリフレ=ハイパーインフレ論はまったくの誤りなのである。むしろ彼がリフレ政策に消極的ないし反対の立場に立てば、日本経済の各種の指標は大きく悪化していくだろう。
2012年9月、安倍晋三総裁選出に伴う自民党新三役共同会見で握手する(右から)安倍総裁、石破茂幹事長、甘利明政調会長、菅義偉幹事長代行ら自民党執行部(古厩正樹撮影)
2012年9月、安倍晋三総裁選出に伴う自民党新三役共同会見で握手する(右から)安倍総裁、石破茂幹事長、甘利明政調会長、菅義偉幹事長代行ら自民党執行部(古厩正樹撮影)
 さらに問題なのは、石破氏の「消費増税主義」といえる立場にある。まるで消費増税自体が自己目的化しているようだ。現在のリフレ政策が100%ではなく、合格点をなんとかクリアする状況にとどまっているのは、消費増税とその悪影響が続いているからに他ならない。デフレを脱却しないままで、消費増税を実施し財政を緊縮化し、さらにリフレ政策に否定的な消極的金融政策をとるであろう「石破政権」は日本に再び大停滞を引き起こすだろう。