住民によるパトロールというと、とかく不審者の発見を目的にしがちだが、それは有害無益と言わざるを得ない。そこで海外では、犯罪が起こりやすい場所を重点的に回る「ホットスポット・パトロール」が一般的である。ホットスポットとは、実質的には「入りやすく見えにくい場所」のことだ。残念ながら、日本でホットスポット・パトロールを実施している地域は1割にも満たない。

 集団登下校やスクールバスの導入、あるいは防犯カメラの設置を提案する動きもある。しかし、子供が外にいる時間は、登下校時間の数倍に及ぶ。公園や塾の行き帰りの安全は、どう確保しようというのか。

 防犯カメラにしても、犯罪機会論に基づくシミュレーションを前提にしなければ、犯人の検挙には役立っても、犯罪を未然に防止することは難しい。現状では、防犯カメラと言いながら、その実態は捜査カメラに過ぎない。

 やはり、防犯対策の「1丁目1番地」は、子供が1人になったとしても、自分で自分の身を守れるようにすることだ。子供の性的誘拐のほとんどが、だまされたケースであることを考えると、最優先課題は「だまされないための教育」である。

 では、どうすれば、だまされないで済むのか。人はウソをつくから、人を見ていてはだまされてしまう。だまされないためには、ウソをつかないものを見るしかない。それが景色である。景色は絶対に子供をだまさない。

 私は、景色が放つメッセージを感受する力、言い換えれば、景色に潜む危険性を見抜く力を「景色解読力」と呼んでいる。景色解読力を高めれば、危険を予測して回避することが可能になる。景色に注意するだけで、人には注意しないので、地域の人間関係を損なうこともない。

 では、どうすれば景色解読力を高めることができるのか。その簡単な方法が「地域安全マップ」づくりだ。地域安全マップとは、犯罪が起こりやすい場所を風景写真を使って解説した地図である。具体的に言えば、(だれもが/犯人も)「入りやすい場所」と(だれからも/犯行が)「見えにくい場所」を洗い出したものが地域安全マップだ。

 ここで注意しなければならないのは、マップづくりとはいうものの、実際には能力の向上という「人づくり」であって、正確な地図の作製という「物づくり」ではない、ということだ。なぜなら、犯罪者は地図を見ながら犯行場所を探しているのではなく、景色を見ながら犯行を始めるかどうかを決めているからである。それは子供たちにとっても同じこと。地図を見ながら学校や友達の家に行ったりはしていないが、景色はいつも見ている。つまり、安全と危険は、地図の中ではなく、景色の中で判断すべきものなのだ。

 景色を見ながら、安全と危険のポイントを解説した「写真集」として、『写真でわかる世界の防犯-遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館)があるので、ぜひ参考にしていただきたい。そうした知的チャレンジを通して、通学路だろうが初めての場所だろうが、どこに行っても、景色からのメッセージをキャッチし、注意モードをオンにする景色解読力を高めてほしい。