アメリカのメディアによれば、中国は金正恩を殺害して体制を崩壊させる「斬首作戦」は容認できないが、朝鮮半島近海に空母カール・ビンソンとロナルド・レーガンを展開して脅しをかけることや、北朝鮮の核施設をピンポイントで破壊することについては反応しない(中国軍は動かない)とアメリカに告げたという。したがって、アメリカは北朝鮮問題で中国と軍事衝突することはないと判断したようだ。

 この三つの要求をトランプ大統領に突き付けられた首脳会談直後の習主席は、まるで「電気ショック」を受けたかのように呆然としていた。しかし、その後、トランプ大統領が議会やメディアに追い込まれ、支持率が低下していく中で、中国が一部の約束を履行している点が数少ない成果になるとして、むしろトランプ大統領のほうが中国になびいてきているように見える。

“中国版プラザ合意”の破壊力

 トランプ大統領はツイッターで「北朝鮮問題で我々に協力している中国を為替操作国とどうして呼べようか」とコメントした。対中強硬派のピーター・ナバロ国家通商会議(NTC)委員長の影響を受けていた当初の立ち位置から見れば、大幅な後退だ。

 それでも米中経済交渉の行方は、中国に大きな影響をもたらす。

 かつて日本は日米貿易摩擦でアメリカから、1960年代後半の繊維製品を皮切りに、合板、鉄鋼、カラーテレビをはじめとする家電製品、自動車、半導体などで輸出の自主規制や数量規制および超過関税、農産物(コメ、牛肉、オレンジ、サクランボ)で市場開放を求められた。もし、中国が北朝鮮問題でサボタージュしたら、アメリカはそれと同じやり方で中国に圧力をかけるだろう。二国間協議では、トランプのようなワイルドな大統領でなくてもアメリカの攻撃は執拗だ。日米貿易戦争に匹敵する米中交渉となれば中国経済が大打撃を受けることは間違いない。
 一方、為替操作をやめろという要求に中国が応じれば“中国版プラザ合意”となる。

 日本は1985年のプラザ合意によって、為替のドル/円レートは1ドル=240円から急激にドル安・円高が進み、1987年末には121円台になってドルの価値は半減した。その後もドル安・円高の流れは止まらず、1994年に100円を突破し、1995年4月には瞬間的に79円台を記録した。固定相場制時代の1ドル=360円から見れば、円の価値は4.5倍になったのである。中国の人民元は2005年までの固定相場制時代は1ドル=8.28元だったので、4.5倍になったら1ドル=2元になってしまう。

 日本企業はプラザ合意後の急激なドル安・円高を、イノベーション、生産性向上、コストダウンの努力と生産の海外移転によって乗り越え、「為替耐性」をつけた。たとえば、日本の自動車メーカーは品質とブランド力の向上によって1万3000ドルで売っていた車種を5万ドルで売れるようになったし、今や海外で1800万台を生産するまでになっている。

 しかし、中国企業に日本と同じことはできないだろう。もし“中国版プラザ合意”が起きて1ドル=2元(その半分の4元でも)になったら、中国企業の経営者は誰もモノを作る気がなくなり、日本企業のように地道な努力はしないで全員が不動産投機に走ると思う。つまり、製造業が崩壊し、その一方でかつての日本のように国内で不動産バブルが膨らむわけだ。