プラザ合意後の日本では不動産が暴騰し、東京都の山手線内側の土地価格でアメリカ全土が買えるという試算も出たほどだった。日本企業は強くなった円でニューヨーク、ロサンゼルス、ハワイなど世界中で不動産を買いまくった。それと同じことが中国発で起きるのだ。

世界的なコスト・プッシュ・インフレ

 しかし、周知の通り、日本のバブルは4年余りであえなくはじけて地価が暴落し、銀行が次々とつぶれて日本経済は「失われた20年」に突入した。中国も同じ轍を踏み、(日本は何とか持ちこたえた)製造業が崩壊しているとなれば、かつての日本以上の惨憺たる状況になるだろう。すなわち中国経済の「インプロージョン」だ。

 また、中国の製造業が崩壊したら、世界が困る。なぜなら「世界の工場」と呼ばれている中国に代わる製造基地はどこにもないからだ。

 たとえば、広東省だけでも人口は1億人以上で、ベトナムの約9300万人よりも多い。ベトナムやタイの人口では中国全体の製造を代替することは到底できないし、人口約1億6000万人のバングラデシュは輸出する港湾などのインフラが整っていないので、ジャスト・イン・タイムで製造しなければならない商品には対応できない。ミャンマーもインフラが整っていない上、まだ政府の役人に賄賂を渡さないと輸出枠をもらえないというような状況だ。

 したがって、中国の製造業が崩壊した場合、中国製品を輸入している国々で物価が高騰し、世界的な「コスト・プッシュ・インフレ」が起きるだろう。とくにアメリカは様々な物を中国から輸入しているので、ウォルマートやコストコなどの棚は空っぽになると思う。

 トランプ大統領はアメリカ国内に産業を戻して2500万人の新規雇用を創出するという公約を掲げているが、それは無理だ。アメリカの失業率は5%を下回って完全雇用に近く、人口動態から見ても、メキシコなどから移民を大量に入れない限り不可能なのだ。となると、アメリカは中国に代わる輸入先を見つけるしかないわけだが、前述したように、それもまた不可能だ。
 その結果、世界のお金の流れが止まってしまうだろう。そこから先はどうなるのか予想し難いが、世界恐慌を引き起こす可能性も否定できない。

 そうした事態を回避する最も簡単な方法は、中国がトランプ大統領の三つ目の要求に応え、何としても北朝鮮の核開発をやめさせることだ。そうすればトランプ大統領は満足して、一つ目と二つ目の要求を取り下げるのではないか。

 いずれにしても、日本は米中の動きを注視しながら、中国経済のインプロージョンという激震に備えなければならない。

 米中が喧嘩して中国元がフロート制になっても、北朝鮮制裁を徹底して米中が仲良くなって北朝鮮が暴発しても、世界には激震が走る。米中問題はドナルド・トランプと習近平という2人のマッドマンに任せておくわけにはいかないくらい、世界経済に甚大な影響を与えるのだ。

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