「理想の自分」に現実を合わせたほうが自意識の安定が得られるなら、他人に迷惑をかけない限り何をしてもいいと筆者は考えている。が、ひとときでも「理想の自分」を手に入れる行為には、快楽と依存性があるので、美容整形をやみくもに勧めていいとも思わない。
 インスタグラムにアップする写真は、メーキャップした顔さながらに「加工」が施されている。美容整形に引き付ければ、「現実を化粧しているようなもの」だ。そうして演出した理想の自分に合わせて、現実を引き上げたいと思う人が出てきても不思議はないだろう。

 冒頭で言及した「アイスクリームを買って撮影し、その場で捨てる」件などは、「かわいいアイテムと一緒に映るかわいい私」という理想をかなえたいがために、社会的に非難されることをしてしまったケースだろう。美容整形のしすぎとでもいおうか、「そこまでするか?」という行為さえ、快楽の前では正当化される。

 最近では、そうした行為が「インスタの闇」として非難されることもあるようだ。インスタグラムに載せて「いいね!」をもらうため「だけ」に連日、衣装を変えて撮影スポットに繰り出す若者や、ブランドバッグを買って撮影し、インスタにアップしたらすぐさまフリマアプリで売るなどの行為が、ネットで嘲笑されている。

 「インスタ映え(笑)」と、「(笑)」をつけて揶揄(やゆ)するのもよく見かける。が、笑っているあなたも、平凡な日常にため息が出そうになったことはないだろうか。つまらない自分と、有名なセレブを比べて、うらやましくなったことが一度でもないだろうか。インスタグラムは、平々凡々とした己の現実を、画像1枚で「理想」のシチュエーションへと近づけてくれる。少なくとも、写真を眺めている間だけは「理想」に耽溺(たんでき)できるのだ。皆が嗤(わら)う「インスタの闇」は、私たち誰もが持っている、ごく当たり前の衝動なのである。