初めて大阪のボーイズ・リーグ関係者たちと交流したとき、東京にはない不思議な人間模様を感じた。東京にも調布シニア、武蔵府中シニアといった名門、強豪チームがある。練習の雰囲気などは、限りなく高校野球に近い。大阪のチームは「プロ野球ごっこ」の風情がある。東京の中学硬式野球は「ミニ高校野球」、大阪は「街のプロ野球」みたいなのだ。プロ野球チームにオーナーがいるように、ボーイズのチームには「代表」がいて、みんなから当然のようにそう呼ばれている。それが快感なのである。プロ野球のオーナーや代表にはなれないが、それらしい気分を味わうことができる。地元のお金持ちがまさにタニマチとして運営しているチームもある。

 特待生問題が物議を醸したとき、東京をはじめ大方の地方の人たちは中学生選手を売り買いするブローカーのようなスカウトがいることに眉をひそめ、問題視したが、大阪人はそもそも「プロ野球ごっこ」をしているのだから、スカウトがいて、裏金があって当たり前なのだ。それに目くじら立てる方が、彼らには「信じられない」のではなかったか。

あわやホームランの大きな当たりを飛ばすがアウトになった履正社の安田尚憲(中央)=大阪シティ信用金庫スタジアム(撮影・林俊志)
あわやホームランの大きな当たりを飛ばすがアウトになった履正社の安田尚憲(中央)=大阪シティ信用金庫スタジアム(撮影・林俊志)
 全国的には清宮幸太郎の通算ホームラン更新に注目が集まり、高校3年生の一打席ごとの結果がネットで速報されている。一方、清宮を超える才能の持ち主ではないかとスカウトの間で評価の高い履正社の安田尚憲は、練習では木製バットを使い、「プロに入ったら金属バットは使えないから」と、先を見据えた練習をずっと重ねてきた。これも安田は高邁(こうまい)な理想の持ち主であり、清宮は目先の記録を狙っている、とばかりは決めつけられない。大阪は高校野球にもプロ野球気分があり、東京はまさにザ・高校野球なのだから。先のことなど考えない。たとえ清宮幸太郎であっても、「高校野球で終わってもいい」くらいの、のめり込みが当たり前なのだ。

 早実対駒大苫小牧、伝説の延長再試合。最後の打者となった関西人の田中将大投手が、斉藤佑樹投手に三振に打ち取られ笑っていたのも、それとつながっているのではないだろうか。履正社の安田もまた、大阪桐蔭に敗れた試合後、チームメイトと健闘をたたえ合った。

 高校野球で終わりじゃない大阪。終わりじゃないけど、終わってもいいと思っている東京をはじめ他の地方。その器の大きさも、大阪の強さの一因かもしれない。