個人消費の中身をみると、自動車や家電製品などの購入増や、外食の売り上げが伸びている。要するに人々の財布の中身が膨らんで、その結果として消費増加が起きている。なぜ人々の財布の中身(可処分所得)が増加したのだろうか。ここもアベノミクス初年度と共通するのだが、ひとつは資産効果によるものである。

 1年前の2016年8月中旬の日経平均株価は1万6千円台だったが、現状では2万円台前後で推移している。伸び率で言えば25%ほどになる。この株高トレンドによって、家計の金融資産残高も増加している。この資産の増加が、耐久消費財などの個人消費の増加を生み出したと考えられる。また為替レート(円ドル)でみても昨年の8月は、1ドル=100円台を割り込む円高傾向だったが、現在は「北朝鮮リスク」に直面しながらも1ドル=110円台で推移している。この円安効果は、日本企業のドル建て資産を増価させ、他方で円建ての負債を圧縮することで、バランスシートの改善をもたらし、設備投資の増加に結びついていく。
2万円を超える日経平均を表示する株価ボード=6月2日、東京都中央区(春名中撮影)
2万円を超える日経平均を表示する株価ボード=6月2日、東京都中央区(春名中撮影)
 このような株高・円安による消費と投資の増加経路は、アベノミクス初年度と全く同じである。ただし、資産効果も円安効果も、アベノミクス初年度ほどの効果はない。なんといっても、前回は民主党政権のどん底のような状況からの一大飛躍であり、その分経済への資産効果は極めて大きかった。わかりやすくいえば、全く勉強をせずに零点を採っていた学生が、ようやくやる気を出して勉強し、60点の合格点に達したのが、アベノミクス初年度の資産効果だといえる。それに対して現状では、すでに資産価値の改善は高い水準で実現していて、60点から「Aランク」の80点を目指す状況にあるといえる。前回に比べて伸びしろが限られてると言い換えてもいい。

 むしろ今後のポイントは、アベノミクス初年度では不十分だった、人々の所得の増加そのものが焦点になるだろう。例えば、実質雇用者報酬は直近では前年同期比で1・4%の増加である。昨年度はほぼ2%台で推移したので、若干弱含みである。この実質雇用者報酬、つまり人々の給料そのものを増やすことが、今後の「内需」増加のキーポイントになる。

 では、どうすればいいか。給料を増やすには、雇用の改善がさらに促される必要がある。確かに現状では、失業率も2・8%にまで低下し、有効求人倍率も全国・地方共に統計上でもまれにみる改善である。その他の雇用関係の指標もよく、しばしばマスコミが喧伝(けんでん)する「人手不足」がもっともらしく聞こえる。