旧民主党の経済政策を総称して、筆者は「緊縮ゾンビ」と名付けた。「緊縮ゾンビ」とは、日本のような長期停滞からまだ完全に脱出していない経済状況にあって、財政再建などを名目にして増税することで、経済をさらに低迷させてしまう誤った経済思想をいう。ブラウン大学教授のマーク・ブライス氏は、「緊縮はゾンビ経済思想である。なぜならば、繰り返し論駁(ろんばく)されているのに、ひっきりなしに現れてくるからだ」(『緊縮策という病』NTT出版、若田部昌澄監訳、田村勝省訳)とも書いている。

 この民主党政権時代の「緊縮ゾンビ」の典型的な政策は、消費増税の法案化である。それと同時に、積極的な金融政策を核にし、積極的な財政政策で補うという、不況脱出の常套手段を放棄したことが最も深刻な過ちである。

 そしてこの「緊縮ゾンビ」から今回の二候補は脱却できたであろうか。前原氏は「中福祉・中負担」を目指して、教育の実質的な無償化や職業教育の充実などを掲げている。消費増税については、「中福祉・中負担」の核心部分であり、積極的に引き上げるべきだとしている。対する、枝野氏は、消費増税については現段階では引き上げるべきではないと述べている。そして、公共事業費などを削減し、他方で保育士などの賃金を引き上げて、雇用や消費の拡大を狙うという。
民進党代表選の公開討論会に臨む前原誠司氏(左)と枝野幸男氏=2017年8月
民進党代表選の公開討論会に臨む前原誠司氏(左)と枝野幸男氏=2017年8月
 前原氏の経済政策のスタンスは、伝統的(?)な同党の緊縮ゾンビそのものである。その意味では、まったく過去の政策の過ちを反省してはいない。消費増税をする一方で、教育や福祉を充実させて、それで国民の生活は豊かになるだろうか。また経済格差などを解消できるだろうか。

 答えはノーである。消費増税政策は、むしろ国民の生活を窮乏化し、また経済格差などのデメリットを増加するだろう。「消費増税しても社会保障を拡充すれば経済格差や生活の困窮を防げる」というのは、緊縮ゾンビの主張の核心だ。前原氏のあげている「中福祉」はここでの「社会保障」に該当する。この消費増税政策は同時に、所得税から消費税への「消費税シフト」という税制の変更の一環であることに注意が必要だ。この「消費税シフト」は、財務省(旧大蔵省)が1980年代から本格的に推進している税制改革の主軸である。実際に消費税率が引き上げられる一方で、所得税の最高税率は引き下げ基調が続いた。

 例えば、1986年の所得税の最高税率は、約70%だったが、「消費税シフト」に伴い引き下げられていき、1999年には37%に低下した。2015年には45%に戻しているが、所得税の累進課税としての機能はかなり低下した。つまり、より多く所得を稼ぐ人から税金をとることがなくなったために、再分配機能(経済格差の是正効果)は低下したということだ。

 また、税金を多くとれるところから取らなくなったために、財政状況はもちろん悪化する。さらに経済自体も長引くデフレ不況によって税収が伸び悩むことで、さらに二重に悪化した。もちろんデフレ不況を深める上で、1997年の消費増税の負の衝撃は大きな役割を果たしてもいる。