そして世代にわたる資産の格差をふせぐ相続税の最高税率も1970年代では70%台だったが、今日では50%台に引き下げられている。すなわち「消費税シフト」は、人々の経済的平等を妨げてきたといえる。実は、このような「消費税シフト」が、世界的にも経済格差を深刻化させ、将来的にも無視しがたい要因になっていることは、トマ・ピケティの『21世紀の資本』などの議論で明瞭だった。

 だが、消費増税への反対や不況期に行う積極的なマクロ経済政策(金融政策中心で、財政政策でそれを補う)を採用する政治家は、民進党では絶対的少数派であり、また同党の中で政治的な勢力にはまったくなっていない。筆者の見るところでは、馬淵澄夫衆議院議員が現職としてただ一人である。

 さらに、同党員では、金子洋一前参議院議員が、積極的なリフレ政策の主張者であり、また消費増税反対論者としても知られていた。残念ながら、これらの筆者からすると長期不況に抗する政策を唱えることができる人たちが、野党の中で政治的な中核にならないことが、日本の経済政策論争を貧しいものにしていることは疑いない。

『デフレ脱却戦記 消費増税をとめろ編』の著者で前参議院議員の金子洋一氏
『デフレ脱却戦記 消費増税をとめろ編』の著者で
前参議院議員の金子洋一氏
 例えば、金子氏は、最近意欲的に政策発信をしている。ユニークな試みであると思うが、自著『デフレ脱却戦記 消費増税をとめろ編』(金子洋一コミケ事務所発行)を出して評判になっている。その中で、金子氏は次のような、アベノミクスに代わる政策提言を行っている。

 「政権との対立軸が必要なら、手垢のついたイデオロギーに囚われるのではなく、『緊縮財政をやめて金融緩和+教育子育て予算を純増』、『すでに欧州で法定化されている11時間インターバル制導入など労働時間短縮』などにしてはどうでしょうか」

 この金子氏の提言は筆者も賛成である。だが、前原氏も枝野氏もともに緊縮財政、金融緩和反対である。前原氏の場合は、教育子育て予算は「純増」ではなく、増税して増やすので、金子氏のいう「純増」ではなくプラスマイナスゼロの発想だ。このプラスマイナスゼロの発想は、枝野氏も同様で、先に書いたように、公共事業を削り、その一方で保育士の賃金などをあげるものだ。

 金子氏のような発想であれば、必要ならば長期的な観点でインフラ投資を増やし、また同時に保育士の賃上げも行い、また教育投資も増やすだろう。その財源は、消費増税ではない。国債の新規発行や、また所得税や相続税の税率の見直しも含めて、経済成長の安定化による税収増がその財源調達として中心になるだろう。

 枝野氏は、消費増税の現状での引上げに否定的なので、あたかも「緊縮ゾンビ」ではないかのようだ。だが、枝野氏の引き上げ否定は、経済論には立脚していない。前々回の論説で指摘したように、枝野氏の消費税に対する見解は「消費税シフト」を目指すものである。

 もし、その考えを訂正するならば、従来の見解を否定して、金子氏のような反緊縮政策の姿勢を明瞭にすべきだろう。それができないならば、単に経済論なき政治的な身振りと評価しても差し支えないものである。いま、アベノミクスに対抗するために求められるのは、枝野ノミクスや前原ノミクスの類いではない。先に紹介した「金子(勝ではなく、洋一)ノミクス」ではないだろうか。