3回行われた会見のうち、1回目は事件発生から相当時間が経ってから行われたにも関わらず、差別側と反差別側の双方に問題があったことを示唆し、白人至上主義者を名指しで批判することを避けるものでした。この会見は、人種差別を相対化するものと受け取られ、その後のメディアで激しい批判を受けます。

 それを受けて行われた2回目の会見では、「人種差別は悪」であるとし、白人至上主義者やネオナチを名指しで批判しました。ところが、今度はその批判がいかにも熱のこもっていない(よって大統領の本心ではない)印象を与えてしまいます。
8月15日、ニューヨークのトランプタワーで行われた会見で質問する記者を指さすトランプ米大統領(AP=共同)
8月15日、ニューヨークのトランプタワーで行われた会見で質問する記者を指さすトランプ米大統領(AP=共同)
 決定的だったのが、政権批判が一段と高まった中で行われた3回目の会見。ここで、トランプ大統領は開き直りとも見える態度を取り、どっちもどっち論をさらに強調する姿勢に回帰したのです。それは、米国政界、米国社会が長年かけて到達した人種差別に対する「決まり事」を前面的に無視する逆ギレ会見でした。

 一連の発言から推察されることは、政権が事件への対応をめぐって逡巡していたこと。大統領は意図してどっちもどっち論を取ったこと。軍出身で新任のケリー首席補佐官を中心に発言の修正を試みられたこと。ところが、それは大統領の本心ではなく、最後は大統領の地が出たということ。そして、現政権は、大統領の地をうまくコントロールすることができないということです。

 遠い歴史の問題ではなく、現在の問題として人種差別に苦しむ米国社会にあって、大統領の発言は傷に塩を塗り込むかのようなもの。いつもは、党派性の中で激しい応酬をぶつけ合う、米メディアのプロ達が怒るよりも前に傷つき、涙していることが印象的でした。

 大統領の諮問機関に名を連ねていた財界人達がこぞってその職を辞すと発表したため、大統領は複数の諮問機関そのものを解散せざるを得ませんでした。これまで、大統領を直接批判することを控えていた共和党穏健派の大物議員が大統領の精神状態に疑義を呈するまでに至りました。さすがに危機感を募らせた政権は、政権内の右派の大物であり、トランプ氏当選の立役者の一人であったバノン補佐官の更迭を発表し、事態の沈静化に必死です。

 最新の世論調査では、共和党支持者の間での政権支持率は依然として60%台後半。主流メディアが批判一色であるにも関わらず、政権の支持率が底堅いわけですから、直ちに政権基盤が壊れる状況にはありません。そして、外からは全米がトランプ批判一色であるように見えながら、政権のコアな支持層がトランプ支持を崩していない点が、米国社会の分断を象徴していると言えそうです。