今後の米政治の流れ


 トランプ政権への批判がこれまでになく高まっている中で、今後の政治の流れを予想することは困難です。上述したように、共和党内の支持が底堅いことを考えると、直ちに政権基盤がグラつくことはないと思います。バノン氏の解任を受けて、トランプ政権の基本方針が変わるともあまり思えません。現政権は、バノン氏のような特定の人物によって左右されてきたというよりは、大統領個人のキャラクターとその信ずるところによって規定されている部分が大きいからです。また、トランプ政権のような「アウトサイダー」政権において、政権発足後しばらくの期間、陣取り合戦的な政権内の権力闘争が激しく、政権運営が安定しないということも、過去なかったことではありません。

 もちろん、トランプ政権における幹部人事の遅滞や、政権内部の勢力争いが極端にひどいという点で大方の識者は一致をみています。また、諸政策を実現する上では、政権のコア支持層を超えたより幅広い支持を獲得する必要があります。医療保険改革法案の失敗を受けて夏休みに突入した政権が、休暇明けにいったいどのような戦略をもって政策推進に臨むのか。
米ニューヨークのトランプタワーのロビーで、トランプ大統領が語る姿を見るケリー大統領首席補佐官(左)=8月15日(AP=共同)
米ニューヨークのトランプタワーのロビーで、トランプ大統領が語る姿を見るケリー大統領首席補佐官(左)=8月15日(AP=共同)
 大方の予想は、減税法案を早期に出してくるというものです。共和党の諸派が合意でき、国民に対して訴求力がある政策だからです。ただ、医療保険政策と同様に減税政策の肝も細部に宿るもの。新たにトランプ政権の司令塔となったケリー首席補佐官の手腕が問われるところです。

 とはいえ、今般の人種差別をめぐる論点がなくなるわけではありません。トランプ氏が意図された混同論を続ける限り、事態は改善しないでしょう。現在の差別主義者に対しては絶対的な論調で非難するべきです。それは、大統領の道義的リーダーシップの一環であり、曖昧さを紛れ込ませる必要のないものです。

 シャーロッツビルを離れ、一部の反差別団体によって南軍関連の公共物を、法的手続きを経ずに引き倒す動きも広がっています。法的には器物損壊と言わざるを得ない行動が「反差別無罪」の雰囲気の中で正当化されている現実があります。白人至上主義のデモの参加者を、ソーシャルメディアを通じて特定し、個人情報を公共空間に晒したり、所属先の責任を追及したりする動きも広がっています。集会への参加を指摘された者が職場をクビになった事案もあれば、差別主義者を指弾する人民裁判的な動きの中で、単なる人違いの事案も発生しています。

 トランプ氏がどっちもどっち論を採用した根底には、このような動きに対する感情的な反発があるのでしょう。それは、正義や進歩と同時に秩序を重んじる保守層に典型的な反応であり、一概に批判されるべきものではありません。ただし、差別主義者に対する拒絶を明確にして初めて、国民の大層は聞く耳を持つというもの。歴史認識や、法と秩序の論点を提起したいのであれば、現在の問題としての差別の問題をゆるがせにすることは許されないのです。
(ブログ「山猫日記」より2017年8月22日分を転載)