近年、各地で表面化している、「土地の所有者が分からず、利用が進められない」という事象の背景には、こうした相続未登記の問題がある。必要な土地の中のごく一部でもこういう土地があれば計画の遅れに繋がる。

(iStock)
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 2014年4月からスタートした農地中間管理機構による農地の集約化の促進でも、同様のことが事業の障害となっている。同機構による農地の貸付は、土地の登記名義人による契約が原則だ。そのため、相続未登記の農地の所有者確認に時間を要し集約の足かせになる事例が各地で報告されている(注4)。

 農林水産省が昨年行った初の全国調査によると、登記名義人が死亡していることが確認された農地(相続未登記農地)およびそのおそれのある農地(住民基本台帳上ではその生死が確認できず、相続未登記となっているおそれのある農地)の面積合計は約93万ヘクタール。全農地面積の約2割に達するという(注5)。

 こうした未登記農地では、今後、現在の所有者が離農した場合、新たな権利関係の設定には相続人調査と登記書き換え手続きが必要になる。そのため、迅速な権利移転が困難になることが懸念される。

 それでは、こうした問題は全国でどのくらい発生しているのだろうか。また、問題の全体構造はどのようになっているのだろうか。筆者らは土地の「所有者不明化」の実態を定量的に把握するため、2014年秋に全国1,718市町村および東京都(23区)の税務部局を対象にアンケート調査を実施した。次回はこのアンケート調査の結果から、全国の実態と問題の全体像を考える。

(注1):渡辺洋三(1973)『法社会学研究4 財産と法』、東京大学出版会
(注2):日本経済新聞「空き家解体 根拠は『税』」2015年11月30日、同「危険空き家28軒に勧告」同年12月6日。
(注3): 国土交通省 国土審議会 計画推進部会 国土管理専門委員会(第1回)「資料6_人口減少下の国土利用・管理の検討の方向性」15ページ。https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/kokudo03_sg_000053.html
(注4):例えば、日本経済新聞〔四国版〕「農地バンク利用低調」2015年6月17日、南日本新聞「まちが縮む(5)土地問題 未相続が『足かせ』に」同年9月26日など。こうした実態を踏まえ、政府の「日本再興戦略2016―第4次産業革命に向けて」(2016年6月2日閣議決定)では、「相続未登記の農地が機構の阻害要因となっているとの指摘があることを踏まえ、全国の状況について調査を行うとともに、政府全体で相続登記の促進などの改善策を検討する」ことが明記された。

よしはら・しょうこ 東京財団研究員兼政策プロデューサー。東京外国語大学卒。タイ国立シーナカリンウィロート大学、米レズリー大学大学院などを経て現職。国土資源保全プロジェクトを担当。