現在の多くの対策が「対症療法」にすぎず、もはやどうにもならないという著者の指摘は大きな警告である。つまり、いまある法律の枠組みでは解決できないのだ。自治体の空き家条例のように撤去のための助成金を出すだけでは解決は進まないし、代執行も難しい。空き家に固定資産税を大きく賦課しようというハードルも高い。「売れない」から流動化できない、「貸せない」から活用できない、「解体」したら税金負担に耐えられない、だから放置される悪循環に陥っているという著者の説明は明快だ。

 ではどうすればよいのか。著者は自らの実務経験などから以下のような処方箋を提示する。

・市街地再開発手法の応用
・シェアハウスへの転用
・減築
・介護施設への転用
・在宅介護と空き家の融合
・隣家との合体

 などだ。いずれも確かにそうした方法は有効だと思われるものだ。だがその一方で、既存の法律やルールの枠組みで進めてゆくのはなかなか難しい面もあるのではないか、との印象も受ける。
(iStock)
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 空き家であってもそれぞれの家に所有者がおり、所有権があることから、権利を尊重する必要があることは当然だ。だが、必要な場合には、一定の保護や保証を与えつつ、ある程度の私権の制限を行って、大胆な都市計画などを行うことが必要という著者の考え方には大いに賛同できる。

 時代の変化によって、都市計画などに求められる社会のニーズも変化する。人口が減り、生産年齢が減り、家が余り、空き家が増えるというのは、戦後の日本が経験したことのない新しい局面だともいえる。成熟社会の宿命ともいえる方向にいま社会は確実に動いている。固定観念にとらわれず、柔軟な発想をするにはどんな覚悟が必要なのか。「空き家問題」という切り口を通じて日本が直面している喫緊の課題を再認識させてくれる一冊である。

なかむら・ひろゆき 1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など