また「北朝鮮のミサイル発射や核開発の中で解散・総選挙を行うのは政治的空白を生むので間違いだ」という発言もある。だが、この発言の前提には、北朝鮮リスクが短期的に解決するものであるという予断があるのではないか。

 いまの北朝鮮の核開発ペースでいくと、専門家の指摘では、1年か2年で米国本土に到達できる核弾頭ミサイルが完成するといわれている。つまり、北朝鮮リスクは時間の経過とともに増加していくと考えるのが現状では自然だろう。いまの衆院議員が任期満了まで務めれば来年末が総選挙である。その時期はちょうど北朝鮮の核開発の最終段階に到達している可能性が高い。言い換えれば危機のピークである。現段階で、北朝鮮リスクを解散・総選挙の否定理由としている論者はこの点をどう考えるのだろうか。

 もちろん安倍首相側にも、解散・総選挙の理由で北朝鮮リスクを挙げるならば、それなりの具体的な対案を問うべきだろう。それがなくただ単に不安をあおるような姿勢でいれば、国民の多くが不信を募らせることは間違いない。安倍政権による対北朝鮮対応の核心は、日本・米国・韓国の安全保障の連携に尽きる。北朝鮮のミサイル発射に伴う「挑発」行動は、多くの識者が指摘するように、日韓を飛び越えて、核問題を含めて米国との直接交渉に持ち込むこと、さらにいえば日韓と米国の間に「不信」というくさびを打ち込むことが狙いだろう。
9月15日、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、首相官邸で報道陣の取材に応じる安倍首相(松本健吾撮影)
9月15日、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、首相官邸で報道陣の取材に応じる安倍首相(松本健吾撮影)
 日本と韓国は、米国を中心にした「核の傘」によってその地域的な核抑止力やまた安全保障を担保している。この3カ国による実質的な東アジア防衛システムは、米国抜きでは維持はできない。仮に米国が北朝鮮と直接に交渉し、その核保有などを認めるとするならば、3カ国による地域防衛システムは破綻しかねない。米国への「不信」は、日本と韓国、そして北朝鮮をはじめとした地域内での軍備拡張ゲームに移行してしまうリスクがある。日本はただでさえ、冷戦終了後の経済停滞や財政再建主義の反動で、米軍への防衛力「ただ乗り」が事実上加速している。これは意外に思われる人たちも多いだろう。

 正確にいえば、冷戦時代から日本と韓国は米国に防衛力の面では「ただ乗り」をしてきたといえる。その簡単な証左が、両国に偏在する米軍基地や「核の傘」の存在である。もちろん米軍基地の縮小・撤廃そして防衛費の肩代わりなどを両国は行ってきている。