例えば、だいたいの先進国が名目国内総生産(GDP)の2%程度を軍事費にあてる中で、日本は名目GDP比で1%を防衛費の「上限」としてきた。つまり拡大速度は先進国の標準の半分である。さらに加えて、90年代初めから2012年ぐらいまでの名目GDP成長率は平均するとゼロであった。もし先進国の成長率の平均を2%程度とし、日本もそれと同様だったとすると、日本の防衛費の現状は達成可能であった水準のだいたい半分である。ただでさえ拡張スピードが抑制されているのに、20年以上速度を示すことすらしなかった。それでも日本の防衛がそこそこ機能できた背景には、米国の軍事力への「ただ乗り」とその加速化が背景にあったとみていい。

 もちろん米国にも、この「ただ乗り」を放任する経済的なメリットがあった。冷戦が終了しても東アジアの地政学的リスクを顕在化させるのは得策ではないからだ。したがって、問題は「核の傘」への依存などある程度の「ただ乗り」を認めたうえで、日米韓3カ国の防衛システムを維持し、その中で経済的・軍事的負担のバランスを図るというのが、いままでの米国の戦略だったろう。

 この日米韓の防衛システムにくさびを打ち込むことが、北朝鮮の狙いであるのはほぼ自明である。そのため、安倍首相は訪米でトランプ大統領、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と3カ国首脳会談など積極的に行い、米国・韓国との連携強化に注力した。
国連総会の一般討論演説を行う安倍首相=9月20日、ニューヨーク(代表撮影・共同)
国連総会の一般討論演説を行う安倍首相=9月20日、ニューヨーク(代表撮影・共同)
 話を戻すと、北朝鮮リスクはかなり長期化する。しかも時間が経過すればするだけその潜在的リスクは増大していく。つまり政治的解決のハードルも上がっていく。「対話路線」、日米韓連携、国連の制裁など多様なルートによる北朝鮮リスクの抑制がすぐに効果をあげるめどはたっていない。その中で、いまの段階で解散・総選挙を行うのは、北朝鮮リスクだけを考えてもそれほど悪い選択とは思えない。

 ちなみに私見では、解散・総選挙をめぐる安倍首相を含めた各党派の思惑について、評論家の古谷経衡氏の発言ほど簡にして要を得たものはないので、最後に紹介したい。もっとも票読みについてはどう出るかは、私にはわからない。与党の大敗で終わっても不思議ではない。それが選挙だろう。

 大義がない、党利党略だ、と言ってもこれが選挙。今解散すれば、自民党単独で270くらいは行くだろう。公明党と合わせれば300超で大勝利。これが選挙なのだ。こうやって冷徹に勝ってきたから安倍1強は実現している。情でも理でもない、票読みなのだ。選挙で勝つのが権力の源泉のすべてなのだ。