日本でリベラルという言葉は好感度が高いが、欧州では否定的なニュアンスで語られることが多い。「自由主義すぎる人」「競争的すぎる」として保守・左翼双方から批判されている人たちだ。

 かつて、英国では1960-70年代の「福祉国家」の時代に、「コンセンサス政治」が行われていた。保守・労働の二大政党制で政権交代が繰り返されながら、どちらが政権を取っても、福祉政策の中身は変わらなかった。貴族や富裕層出身が中心の保守党右派政権は「貧しき者には分け与えよ」という思想から、一方、労働党左派政権は労働者の権利拡大のために福祉政策を拡大した。その結果、保守党左派・自由主義のサッチャー政権が登場するまで、深刻な財政赤字に悩まされ、「英国病」と呼ばれていた。つまり、保守と左翼は真逆の思想信条ながら、実際に行う政策は、どちらも再配分重視という「コンセンサス」があったのだ。
2017年9月28日、臨時閣議に臨む安倍晋三首相(左)と麻生太郎副総理兼財務相(斎藤良雄撮影)
2017年9月28日、臨時閣議に臨む安倍晋三首相(左)と麻生太郎副総理兼財務相(斎藤良雄撮影)
 これを日本に当てはめると、どうなるだろうか。安全保障政策は除外して、経済政策の方向性を検証してみる。保守は、安倍晋三首相、麻生太郎副総理兼財務相など富裕層の世襲議員が多い。経済政策は、金融緩和や公共事業を「異次元」で繰り出す「アベノミクス」であり、「一億総活躍」「働き方改革」「人づくり革命」と、上から目線で国民を導こうとする推進運動の数々である。「貧しき者には分け与えよ」という思想がプンプン匂ってくる。

 リベラルに当たるのは、自民党では「軽武装・経済至上主義」を掲げてきた岸田文雄政調会長ら宏池会や、野田聖子総務相らであろう。安全保障ではバリバリの保守のイメージがある石破茂元防衛相も、経済では地方創生に取り組み、単純なバラマキよりも「第3の道」的な志向があり、リベラルといえる。

 一方、野党側では、前原誠司民進党代表や、希望の党に移った旧民進党右派、そして安全保障政策では保守だが、内政に目を移せば女性の活躍重視、ダイバーシティ(多様性)重視、環境重視の小池氏がリベラルということになる。

  「リベラル守れ!」を合言葉に勢いを強めている立憲民主党・社民党・共産党は、明らかに欧州の文脈ではリベラルではなく、「左派」であろう。実際、フランスのメディアは日本のリベラル派を左派と訳しているのだ。日本の左派がリベラルと名乗るのは、左派ではイメージが悪いからだろう。選挙で票にならないので、必死にリベラルという呼称を確保しようと、アピールしているように見える。