それでは、どうして3カ月前の東京都議会議員選挙時の都民ファーストのようなブームが起きなかったのであろうか。それは、希望の党代表の小池百合子氏が「民進党候補を全部受け入れる気はさらさらない」と言ったことで独断的に見え、自民党支持だが首相の独断は好きではないという一部有権者の票の受け皿にならなくなったからではないか。

 また、これまでの国会で安保法案に反対していた民進党議員が、希望の党の公認を得るために安保法制の実施や憲法改正に賛成する協定書に同意したことによって、政策や信念よりも自分が議員でいることの方が大事なのかという思いを持った有権者もいるのではないか。さらに、党の代表自身が立候補しないことも、希望の党の人気が盛り上がりに欠けた一因となったのではないか。

 その上、安倍晋三氏が野党の政策を先取りして行う戦略が成功している面も否定できない。安倍氏が小泉純一郎氏の後を継いだときは、「ジェンダー」という言葉の使い方をめぐり、女性に冷たいのではないかと思われて支持率を落としたこともあったが、首相に返り咲いてからは男女共同参画を主張し、国家公務員試験の合格者の3割を女性にするようにしている。

 また、「保育園落ちた。日本死ね」と批判されたこともあったが、今回の総選挙では消費税を10%に上げた分を保育園などの幼児教育に使うことを公約に掲げている。つまり、本来、野党が言い出すべき政策を先取りして実行することで、自民党のウイングを広げる戦略が功を奏しているとも言える。
街頭演説後、つめかけた人らとハイタッチを交わす安倍晋三・自民党総裁(右)=2017年10月19日、生駒市の近鉄生駒駅前(神田啓晴撮影)
街頭演説後、つめかけた人らとハイタッチを交わす安倍晋三・自民党総裁(右)=2017年10月19日、生駒市の近鉄生駒駅前(神田啓晴撮影)
 その結果、自公連立政権が過半数割れする可能性は低くなり、憲法改正の発議に必要な3分の2の議席をどのような枠組みでとるのかに焦点が移っている。自公+日本のこころ+保守系無所属の追加公認で届くのか、それとも他党の議席も必要となるのか。一方、野党側からみれば、立憲民主党+社民党+共産党で3分の1を確保することはかなりハードルが高いことから、総選挙後の野党再編が再度、話題になるのではないか。

 いずれにしろ政治家の都合による勝手な離合集散で、選挙前の公約と選挙後の行動が異なることだけはあってはならない。

注:全国の18歳以上の男女を対象に、居住地域と都市規模による層化を行った上で、性別と年齢による割り当てを行い、10月13~16日に実施。有効回答3000を得た。